1.「工事契約に関する会計基準」の適用範囲
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(1)基準のポイント
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受注制作ソフトウエアに本基準を適用するに当たっては、基準がどのような取引を適用対象としているか整理を行う必要があります。基準32項では「その範囲は具体的には、実務対応報告第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下、実務対応報告第17号)に示されている」とあり、実務対応報告第17号1(1)では以下のものをソフトウエアと定義しています。
コンピューターに一定の仕事を行わせるためのプログラム
システム仕様書、フローチャート等の関連文書
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ここで、注意しなければならないのは実務対応報告第17号1(1)②において「ソフトウェアとして一定の機能を有する成果物が給付の対象となるような取引」を受注制作のソフトウエア取引であるとし、「成果物」に着目している点です。従って、受注制作ソフトウエア取引には請負契約、準委任契約、システム・エンジニアリング・サービス(SES)契約などさまざまな契約形態が存在しますが、成果物の給付を対象としないもの、例えば労務サービスを提供するような取引は受注制作ソフトウエアには該当せず、基準の適用対象とはならないことになります。
なお、内部統制の観点からは、取引の判断に当たって恣意(しい)性が入らないよう、自社の取引を類型化し、基準の適用範囲に含まれるかどうかを整理しておくことが効果的です。また、類型化した標準の取引に当てはまらない例外取引が生じた場合には、営業部門だけで判断せず、受注承認の段階から経理部門が関与し、取引内容を十分検討し、基準が適用されるかどうかを判断できるような仕組みを定めておくことも一つの方法です。
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(2)受注制作ソフトウエアにおける多段階契約と基準の適用範囲
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システム開発の流れは、一般的に「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「運用」という形でくくられることが多いと考えられますが、ソフトウエアの開発は工程が進むに従って仕様が固まってくる傾向が強いことから、一つのシステムを開発するに当たって段階的に契約を締結する多段階契約が選択されることがあります。このような場合、必ずしもすべての工程が成果物の給付を対象としているわけではないケースもあるため、基準の適用対象外となる部分も出てくるのではないかという疑問が生じます。
この点について基準では、労務サービスの提供そのものを目的とするような契約については基準の対象外であると規定していることから、コンサルティングや設計などに多く見られる、かかった工数に応じて精算されるような取引は基準の対象外となると考えられます。また、請負契約による受注制作ソフトウエアであっても、システムエンジニアのスキルランクや人数、稼働時間などがあらかじめ見積もられ、当該見積もりに応じた役務提供が行われたことをもって客先が検収しているような取引は、実質的には労務サービスの提供として基準の対象外と判断できるケースが少なくないと考えられます。
いずれの場合であっても、コンサルティングや設計は工事契約に含まれないというように、業務内容で判断すべきものではなく、「成果物の給付を対象としているか」、あるいは「単なる労務サービスの提供か」といった実質的な観点から取引を判断することが必要と考えられます。
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(3)ハードウエアの納入を伴う受注制作ソフトウエアの取り扱い
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システム開発はハードウエアの納入を伴うことが一般的にはよくあることですが、このような場合には、基準の適用範囲にハードウエアが含まれるか否かが問題となります。
基準ではソフトウエアの範囲にハードウエアは含まれないとされているので、ハードウエア部分は基準の適用対象外と考えるのが自然な考え方です。また、実務対応報告第17号でも「3 ソフトウェア取引の複合取引についての会計上の考え方」の中で、財(ハードウエア)と財(ソフトウエア)が有機的一体として機能しない場合には収益認識を区別することを求めています。ただし、それ自身で価値を持つ、あるいは他の用途でも使用できるような汎用的なハードウエアに対し、ソフトウエアが特別に制作され、ハードウエアに組み込まれて初めて価値が生じるような、特殊用途に開発され、ソフトウエアと有機的一体として機能するハードウエアについては、その取り扱いについて、特に慎重な判断が必要です。
基準では「全体として、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事を目的とする契約であれば工事契約とし、全体として物の引渡しを目的とする契約に付随して行われるに過ぎない場合は工事契約とはならない(基準44項)」と定めているため、ハードウエアとソフトウエアのどちらが取引において主となり従となるのかという点は一つの判断指針に成り得ると考えられますが、安易にハードウエアを工事契約に含める判断を行うことは注意が必要と考えられます。
- 業種に特有な会計及び税務処理シリーズ
第11回:商社・卸売業に特有の会計処理と税務 (2010.02.25) - 不動産業
第4回:保有目的の変更・不動産の時価 (2010.02.18) - 不動産業
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