業種別会計の基礎


海運業
第4回:海運業における取引フローと留意事項 (2009.10.19)

新日本有限責任監査法人 海運業研究会

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1.はじめに

海運業、特に外航海運のオペレーションにおいて特徴的なものは「代理店」の存在です。海運会社は船舶を運用して収益を上げているわけですが、自らがすべての船舶運営のコントロールを行っている訳ではありません。むしろ、海運会社自体は主として顧客獲得と維持のための営業活動や経営企画、採算管理、資金財務活動、船舶調達計画、経理業務といった管理活動のみを行っており、実際の現場業務についてはほぼすべてを主要港に存在する代理店に委ねているといってよいでしょう(そのため、海運会社単体ではその規模に比して従業員が著しく少ない傾向にあります)。

今回は海運業における特徴である代理店を起用した場合の取引の概観と、これに係る会計処理を説明するとともに、そのような一般事業会社と一部異なる会計処理や管理手法が必要とされる背景である、海運業における特殊なビジネスモデルや法制度にも触れます。

2.代理店における作業と会計事象の把握

代理店の具体的な業務は、船舶の入出港手続、燃料、船用品の手配や集荷業務およびそれらに伴う費用の支払い、B/Lの発行、運賃の収受と多岐にわたります。

会計的な側面からは、収益面ではB/Lの発行と運賃の収受・消込作業、費用面では発注から請求書の受け取り、支払いといった一連の作業が代理店に委託されているということになります。

海運会社は、これらの代理店が行った作業結果である運賃の発生と回収、費用の発生と支払いといった会計事象を代理店からの報告(近年では電子化されている場合もあります)によって把握し、経理処理を行うという流れになります。

これら一連の代理店業務のうち会計事象について、海運会社は「代理店債権」「代理店債務」という一種の立替勘定を用いて記帳します。代理店が行う業務の流れと海運会社(運航会社)における会計仕訳の流れをまとめると、次のようになります。

代理店における運賃の収受と運航会社への報告

代理店は荷主から運賃を運航会社の代理人として収受します。収受した運賃についてこれを勘定書に取りまとめ、運航会社に報告します。

(運航会社における仕訳イメージ)

代理店債権 200 海運業収益 200

代理店からの費用見積もりと送金依頼

代理店に入港の連絡をすると、入出港に必要な費用が見積もられます。運航会社はその費用を代理店に対して前払いすることがあります。

(運航会社における仕訳イメージ)

代理店債権 100 現金預金 100

代理店における費用の支払いと運航会社への報告

代理店は荷役等の業者に必要な業務を依頼し、各業者からの請求書を取りまとめるとともに運航会社の代理人として各業者に支払います。これを勘定書に取りまとめ、運航会社に報告します。

(運航会社における仕訳イメージ)

海運業費用
(港費等)
125 代理店債権 125

代理店における回収運賃、支払い費用の精算

代理店における運賃回収額、運航会社の事前の送金額および代理店の支払った海運業費用との差額について、代理店と運航会社間で精算が行われます。なお、代理店はあらかじめ運航会社と取り決めた条件に従い代理店手数料を収受します。

(運航会社における仕訳イメージ)

代理店債権
現金預金
海運業費用
(代理店料)
125
170
5
代理店債権 300

運航会社における海運業未収金、前受金、海運業未払金の整理と計上

運航会社はB/Lを発行しているものについて、対応する運賃が代理店によって回収されているか否か、あるいは代理店によって回収されたものについて、収益認識基準に照らして海運業収益とすべきものか前受金とすべきものかを整理し、勘定処理を行います。

また、発生した海運業費用のうち、請求書は到着しているが未払いのものについて代理店に報告させるとともに、代理店に請求書が未着のものの見積計上を行い、海運業未払金を計上します。

(運航会社における仕訳イメージ)

海運業未収金
海運業収益
(運賃)
海運業費用
(港費等)
70
60

35
代理店債権
前受金
海運業未払金
70
60
35

なお、代理店債権・代理店債務は営業活動に関連して発生した債権と債務ではありますが、対象が直接の顧客あるいは業者ではなく代理店による一種の立替勘定であるため、海運業準則上(個別決算上)、海運業未収金あるいは海運業未払金とは区別して表示がなされます。ただし、連結決算においては、代理店債権は海運業未収金に、代理店債務は海運業未払金にそれぞれ集約して表示されています。

【代理店を利用した貨物運送の流れ(例)】

代理店を利用した貨物運送の流れ(例)

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