業種別会計の基礎


海運業
第3回:海運業準則と海運業の収益・費用 (2009.10.16)

新日本有限責任監査法人 海運業研究会

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1.はじめに

海運業を営む会社も一般事業会社であり、企業会計原則に基づいて会計処理がなされます。すなわち、役務を提供して獲得した貨幣性資産を収益として計上し、役務を提供のために費消した財貨や用役を費用として計上するという点においては、他の事業会社と異なりません。

ただし、海運業を営む上での事業の特殊性、および、財務諸表等規則および国土交通省の定める「海運企業財務諸表準則」(以下、海運業準則)に基づく別記事業としての位置付けから、一部の会計処理や開示に、他の一般事業会社と異なった点があります。

2.海運業における損益計算書項目

海運業の損益計算書は海運業準則の区分に沿って表示することが求められています。

海運業準則における収益・費用の区分の概略(営業利益まで)は以下のとおりです。

Ⅰ.海運業収益

Ⅱ.海運業費用

海運業利益

Ⅲ.その他事業収益

Ⅳ.その他事業費用

その他事業利益

営業総利益

Ⅴ.一般管理費

営業利益

3.海運業の収益形態と収益認識

(1)海運業収益とその他事業収益

海運業を営むことによる収益を海運業収益と呼び、海運業以外の収益であるその他事業収益と区分した記載が求められています。また、海運業収益自体もさらに、運賃・貸船料・その他海運業収益に区分して記載されます。

(2)海運業収益の収益発生形態

海運業収益における収益発生形態は以下の三つに大きく分類・開示されます。

運賃

最終顧客である荷主との間で締結した貨物運送契約に従って貨物を運送したことによる運賃収益をいいます。また、運賃はさらに貨物運賃とその他運賃(旅客運賃等)に区分されます。

貸船料

傭船契約に基づいて船舶を貸与したことによる収益をいいます。傭船契約はその形態により定期貸船料と裸貸船料に大きく区分されますが、そのいずれもがこの貸船料に含まれます。

その他海運業収益

運賃・貸船料以外の海運業を営むことによって生じた収益をいいます。

(3)海運業収益に関する収益計上基準

損益計算書での区分掲記は求められていませんが、貨物運賃は態様として定期船運賃と不定期船運賃に大きく分類することができます。

定期船とは(現在ではもっぱら)コンテナ船のことをいい、不定期船とはそれ以外の油槽船(タンカー)、自動車船、バラ積み船などをいいます。定期船と不定期船とは顧客との契約形態や運航形態、管理手法が大きく異なりますので、それぞれで別の収益計上基準を採用している会社も多いようです。

運賃に関する収益計上基準のうち、慣行として定着しているものは大きく分けて以下の三つとなります。

①積切出港(出帆)基準 航海の出港時にすべての収益を計上する方法
②複合輸送進行基準・航海日割基準 運航に比例して収益を計上する方法
③航海完了基準 航海の完了時にすべての収益を計上する方法

積切出港(出帆)基準

役務提供過程の早い段階で収益を計上する方法ですが、海運業における運送契約においては一般的に積切の時点で運賃請求権が発生しており、かつ、運送荷物自体を動産担保として保有していることにより運賃回収の確実性が高いことから海運業会計において会計慣行として定着しているものです。

複合輸送進行基準・航海日割基準

これらの基準は、運送期間のうちどの程度まで航海が進行しているかを日割等の基準に従って算定し、総運賃のうち期末までに進行した部分の割合を持って収益を計上する基準です。

「複合輸送」とは海上輸送と陸上輸送といった、複数の手段を組み合わせて顧客に提供することを指すため、一般的には当該複合輸送期間のうちどの程度まで輸送が進行したかを算定して収益を計上する基準とされています。複合輸送進行基準は個々の貨物の輸送に着目した方法であり、定期船運賃の計上のための基準です。一方、航海日割基準は貨物ではなく、船舶の航海の進捗を基礎とするもので不定期船の収益認識基準として採用されることになります。

航海完了基準

航海が完了した際に収益を計上するので収益の計上基準としては最も保守的な基準です。わが国では不定期船について多く採用されている会計基準です。不定期船では顧客との個別契約によって一つの航海が決まっており、すべての役務の提供を待って収益を計上することで、航海収支の把握といった、損益管理と整合的であるためと考えられます。また航海完了時まで収益を認識しないため、海運業費用における見積要素の影響を低くすることが可能となります。

運賃以外の収益計上基準

運賃以外の収益の計上基準については、運賃のように特有の基準は設けられておらず、一般的に他の役務提供を営業目的としている企業と大きく変わるところはありません。例えば、貸船料は傭船期間が契約によって定められていますので、傭船期間のうち、すでに経過した日数を日割で計上している企業がほとんどではないかと思われます。

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