1.医薬品卸売業界の特徴
医薬品には医療用医薬品と一般用医薬品がありますが、一般用医薬品は医薬品製造企業から直接薬局等へ販売されるウエートが高いため、医薬品卸企業の取り扱う商品は主として医療用医薬品となります。医薬品卸企業は次のように大別されます。
(系列か否か)
系列卸
大手の製薬企業の影響下にある卸
独立卸
製薬企業と特別のつながりを持たない卸
(直取引か否か)
一次卸
製薬企業と直接取引の多い卸
二次卸
製薬企業との直取引が少なく、主に一次卸から商品を仕入れる卸
第3回は主として一次卸企業を主眼として以下の解説を行います。
医薬品卸売業の特徴、仕組み
会計処理の特徴:仕入に係る特徴、売り上げに係る特徴
(1)流通の仕組みと卸の機能
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医薬品は多品種少量生産であり、かつ生命に関連する商品であることから安定供給が要求されます。このため医薬品は製造から仕入、保管、配送、販売、使用に至るまで薬事法をはじめ各種の厳しい法的規制を受けています。
このような医薬品の商品特性から、医療用医薬品は一般的に「医薬品卸企業」を通して医療機関等への販売取引が行われます。すなわち製薬企業から医薬品卸企業へ、医薬品卸企業から医療機関等への販売が行われることとなります。
日本医薬品卸業連合会によれば、医薬品卸の機能は大きく次の六つに分けられるとされています。
物的流通機能
仕入機能、保管機能、品揃機能、配送機能、品質監理機能
商的流通機能
販売促進機能、適正使用推進機能、コンサルティング機能
情報機能
医薬品等に関する情報の収集および提供機能(薬事法77条の3)
価格設定機能
商品の価値を正しく反映して価格設定を行う機能
財務管理機能
債権・債務の管理、資金運用等を通じ経営資源の効率化を図る機能
市場管理機能
市場ニーズを的確に捉え、医療・福祉の要求にこたえる機能
特に価格設定機能については、従来の医薬品業界では製薬企業が医療機関等との価格交渉に関与していたため卸としての自主性はなかったともいえますが、1992年の「新仕切価制度」の導入により製薬企業の関与は禁止され、医療機関等との価格交渉・価格決定は医薬品卸企業に委ねられることとなりました。すなわち医薬品卸企業は本来あるべき価格設定機能を持つことになったといえます。
このような流通の仕組み・卸機能のもと、製薬企業と医薬品卸企業および医薬品卸企業と医療機関等との間における取引、契約、商慣行などは会計処理を行う上で留意すべき視点となります。
(2)JD-NETの存在
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製薬企業と医薬品卸企業との間には、受発注データなど、企業間の取引上生じる種々のデータを共同して同一の方式により送受信するデータ交換システムが整備され、当該システムは「JD-NET(Japan Drug NET work)」と呼ばれています。医薬品の商取引はほぼ100%JD-NET上で行われています。
取引先間の電子データ交換を行うことにより効率化や簡素化が図れ、JD-NETの利用は利便性やコスト削減に貢献することとなります。医薬品業界においては、その人材は専門的な知識を求められるため、社員教育注力の必要性の観点から販管費率は他業種の卸売業よりも高いといわれますが、このようにコストの削減のための工夫もなされています。
(3)薬価差と医療費抑制政策
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医療用医薬品については、「薬価」と呼ばれる公定価格が存在します。薬価をもって医療機関等が医薬卸から購入する価格とされ、薬価は医療機関等における診療報酬の請求単価となります。
しかし実際には医薬品卸企業から医療機関等へ薬価をもって医薬品が売買されるのではなく、医療機関等では通常「薬価」よりも安い金額で購入するため、売買時に差益が生まれます。これを「薬価差」といいます。薬価差は医療機関等の収入源の一つともなってきました。
医療機関等と医薬品販売業者間の取引価格は、薬価を上限として「薬価よりいくら値引きするか」という自由な価格競争の形で決定されることとなります。そもそも薬価は市場価格主義に基づき公平かつ客観的に設定されるべきという理念のもと薬価差の解消政策が取られてきましたが、医薬品卸企業は医療機関等からの値引き要請がなされる環境に置かれており、このような薬価差の発生は避けられないものでもあると考えられます。
また、近年では医療費抑制政策として薬価の引き下げが続く中、製薬企業からの仕切価格の引き下げ幅は抑えられがちである一方、医療機関等との関係では価格競争が激しく医療機関等からの医薬品卸企業に対する値引き要請は一段と強い状況にあるといえます。このように、医薬品卸企業は両者の板挟みとなり利幅が縮小する傾向にある点に留意が必要です。
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第11回:商社・卸売業に特有の会計処理と税務 (2010.02.25) - 不動産業
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