2.会計処理の特徴
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(2)研究開発に係る特徴
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製薬企業が研究開発活動を行う際、次のような取引を行うことが考えられます。
①委託研究
製薬企業が研究開発を行うに当たり、自社において研究開発を行うほかに外部企業へ研究を委託することもあります。特に医薬品業における研究期間は長期にわたることが多く、かつ研究には多額の資金が必要であることから、分割支払い条件が設定された委託契約を締結することが多いといえます。
(会計処理)
研究開発費の会計処理については「研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない」(研究開発費等に係る会計基準三)とされています。そして、委託研究については、一般的に研究の成果は委託者側に帰属するものと考えられるため、委託者側では「研究開発費等に係る会計基準」に沿った処理を行うこととなり、委託研究に係る費用はすべて発生時に費用処理することとなります。従って、契約金等は前渡金として処理することになりますが、契約に基づき委託した研究開発の内容について検収等を行い、役務の提供を受けたことが確定した時点で、費用として処理することとなります。
【仕訳例】
(支払時)
(借) |
前渡金 |
○○ |
(貸) |
現金及び預金 |
○○ |
(検収時)
(借) |
研究開発費 |
○○ |
(貸) |
前渡金 |
○○ |
委託研究に係る会計処理については、特に研究期間が長期にわたる契約の場合には、いつの時点をもって「役務の提供を受けた」と判断するかについて留意が必要となります。具体的に次のような検収基準が考えられます。
成果物の提供に伴い検収を行う基準
⇒研究が最終的に終了した段階で成果物を入手
⇒研究計画の進行の都度、成果物を入手(研究テーマが細分化されている場合など)
契約による研究費用の支出に伴い検収と見なす基準(研究計画の進行の都度、成果物の入手はなされないが計画どおりの進行の報告がなされるなど)
②バイオベンチャーへの投融資
バイオベンチャー(BV)とは、バイオテクノロジー(生物学的技術)を用いて、病気の治療や産業的に役立つ画期的な製品や新技術を世に送り出すベンチャー企業のことを言います。
このような研究開発型BV企業の企業形態は多様でありますが、大きく創薬型と研究支援型に分類されます。ここでは主役である創薬型のBV企業を特に意識して解説をします。
創薬型BV企業においては一般的に研究開発の成果を特許権として知的財産化し、製薬企業に対して譲渡の実施やライセンス契約を結ぶことにより収益化を図りますが、バイオテクノロジーは生体を対象とするため研究に長期間を要し、かつ多額の資金が必要となるため研究開発資金の確保が必要となります。BV企業においては設立当初より製薬企業から資金・技術提供を受け、事業を行う例が多いといえます。
BV企業と製薬企業との間における資金提供の手段としては、製薬企業からの投資、融資が考えられますが、そのほか共同開発を実施することなども考えられます。
(会計処理)
このような投融資については契約内容や取引内容を十分に吟味した上で、取引の実態に応じた会計処理を行うこととなります。特に契約内容と取引実態が異なる場合などには留意が必要です。
投融資の会計処理は次のようになります。
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融資
通常、資金の貸借日に融資金額を取得価額とし、貸付金として会計処理します。
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投資
株式会社の会社形態をとることが多いと考えられるBV企業への投資は、投資金額を取得価額とし、有価証券として会計処理します。BV企業への投資は、通常売買目的ではなく研究開発の成果を得ることを目的とする長期的投資であり、金融商品会計上の「その他有価証券」に該当すると考えられます(金融商品に関する会計基準第18項)。
【仕訳例】
(融資時)
(借) |
貸付金 |
○○ |
(貸) |
現金及び預金 |
○○ |
(投資時)
(借) |
投資有価証券 |
○○ |
(貸) |
現金及び預金 |
○○ |
そして、上記のようにバイオテクノロジー研究は研究開発の成果が出るまでに長期間を要するため、起業から間もないBV企業については十分な収益が確保されない状況も十分想定されます。BV企業への投融資の評価については、継続企業の前提にも留意した上で慎重な検討が必要です。
なお、BV企業の活動においては、大学の研究成果の活用や、外部機関の利用、他企業との連携などの視点にも留意が必要と考えられます。
③特許ビジネス
医薬品業界においてはパイプラインを確保することが非常に重要であり、そのための特許に係るビジネスも頻繁に行われます。
特許に係る取引は一般的に「ライセンス導出(導入)」と呼びます。ライセンス導出とは薬剤の開発および販売権の使用許可を他社に供与することであり、次のような取引があります。
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特許権の譲渡
特許権につき自己は保有せず、完全に他者に売却を行うこと。
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特許権のライセンス契約締結
特許権につき、自己が保有したまま製造権、販売権などの一部を地域、期間、内容等を定めて供与すること。ライセンス料、ロイヤルティー、実施料、使用料などと呼ばれる「対価」を得ます。
この「対価」(以下、ライセンス料)については、算定方法によってさまざまな種類があります。ライセンス料の種類について大きく区分すると、①売上または利益の一定割合を受け取る、毎月定額を期間に応じて受け取るなどの出来高払い方式、②最初にまとまった金額を決定し、追加支払いを行わない固定払い方式、③両者の併用方式があります。
医薬品の研究開発に当たっては、②固定払い方式のうち、特に契約一時金方式、マイルストーン・ペイメント方式、両者の併用方式によりライセンス料を受け取ることが考えられます。契約一時金方式では、契約時にまとまった金額を受け取ります。受取人側から見れば、まとまった金額が最初に入ることで開発費用の回収が一度にできることとなります。
一方、マイルストーン・ペイメント方式とは、成功報酬型の受け取り方式であり、医薬品の開発の進ちょくに応じて一定の成果などの達成の都度、ライセンス料を受け取ることとなります。研究開発を行う支払人側から見れば、初期投資額が抑えられるほか、研究開発途中での予期せぬ副作用発生により中断した場合などの費用リスクを抑えることが可能となります。
現在では、マイルストーン・ペイメント方式およびその併用方式が主流となりつつあるといえます。
(会計処理)
導出取引に係る収入については、収益認識がいつの時点であるか個別に契約を吟味した上で、各企業における「主たる事業」に該当するか否かにより営業収入とするか否かを判断することになると考えられます。
このような導出取引において、特許権に係る取引に併せて研究開発サービス、製造、販売等の複数の要素が一つの契約の中に折り込まれるなど、契約が非常に多様化され複雑となっている場合があります。このような場合においても実態に応じて十分に吟味した会計処理を行うことに留意が必要と考えられます。
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(3)その他
①偶発債務
医薬品は生命にかかわるものであることから、その副作用や薬害訴訟の発生は潜在的リスクとして常に存在します。
薬害訴訟などが発生した場合には、訴訟の負担に関する見積もりの妥当性を十分に検討する必要があります。
②多額の税務申告調整
研究開発活動、特許取引が活発であることから、研究開発費や移転価格税制などに関連して多額の申告調整が必要となるケースが多いといえます。
特に長期にわたる将来減算一時差異項目が多数存在することから、税効果会計については回収可能スケジュールを十分に吟味する必要があります。
- 化粧品・トイレタリー業界
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