業種別会計の基礎


不動産業
第4回:保有目的の変更・不動産の時価 (2010.02.18)

新日本有限責任監査法人 不動産業研究会
12次のページ

1.不動産の保有目的の変更

(1)保有目的の変更

不動産販売業においては、不動産を販売目的で保有する一方、不動産賃貸業においては賃貸収入を得るために固定資産として保有します。従って、両事業を営む不動産業者においては、不動産の保有目的を変更することが考えられます。

実際に販売用として物件を取得したものの、賃料を得る収益物件とした方が安定収入を見込めるため、販売用不動産を賃貸用不動産に転用することや、賃貸目的で取得した物件が、不動産市場の高騰により、売却してしまった方が得なので、販売目的に振り替えるといったことも考えられます。

保有目的の変更に際しては、変更時点において取締役会等によって承認された具体的かつ確実な事業計画が存在していることや、その変更理由に合理性があることを確認する必要があります。

【不動産の保有目的の変更】

不動産の保有目的の変更

販売目的で保有していた不動産を、賃貸事業目的あるいは自社使用の不動産とする場合には、当該不動産の簿価切下げ後の帳簿価額を有形固定資産または投資不動産に振り替えることになります。なお、販売用不動産は、通常土地と建物を一括で表示していますので、管理台帳上の土地代と建物代に分けて、固定資産に振り替えることになると考えられます。

逆に、賃貸事業目的あるいは自社使用のために保有している不動産を、販売目的による保有に変更する場合には、保有目的の変更自体が当該固定資産の減損の兆候に該当する可能性があるため、固定資産の減損に係る会計基準に従い、減損の認識および測定の判定をした後の帳簿価額により固定資産から販売用不動産に振り替えることになります。

販売用不動産等および固定資産の保有目的の変更が、会社の財務諸表に重要な影響を与える場合には、追加情報として、その旨およびその金額を貸借対照表に注記することが必要となります(販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い 7.販売用不動産等及び固定資産の保有目的変更への対応)。

(2)固定資産から振り替えた棚卸資産を販売した場合の収益の計上区分

固定資産である不動産を棚卸資産に振り替えた場合、販売するために保有目的の変更をするわけですが、固定資産からの振り替え後すぐに棚卸資産である不動産を売却した場合、その売却金額を営業収益としてよいかという論点があります。

例えば期末近くに既存の棚卸資産としての販売用不動産の販売だけでは営業利益目標に届かないので、含み益のある固定資産として保有しているビルを販売目的(棚卸資産)に振り替えて当期中に売却すると、そのまま固定資産として売却していれば特別利益として計上されていた金額が、営業収益や営業利益として計上されることになります。

直近の貸借対照表で振り替えたことが認識できることを条件とするなど、無秩序な振り替え・売却がなされないよう、保有目的の変更の合理性について、慎重な対応が必要です。

2.販売目的で保有する不動産の賃貸収入と賃貸原価(減価償却等)

保有目的の変更ではありませんが、販売目的で保有する不動産を賃貸することが考えられます。具体的には、収益物件として一棟売りするために開発したオフィスビルやマンションについては、テナントを付けた方が売れるため、売却する前にテナントを付ける場合などが考えられます。このように販売用不動産を一時的に賃貸する場合には、賃貸により発生する収入の表示区分と当該物件に関する減価償却の要否が問題となります。

収益の計上区分については、当該販売用不動産の一時的な賃貸を行う企業が、不動産販売業のみを事業目的としているのであれば、本来の事業目的による収益ではないと考えられるため、営業外収益とすべきと考えられます。しかしながら、不動産業においては、一般的に販売業や賃貸業を含めて事業目的としている場合が多いと考えられ、この場合には営業収益としての計上も許容されると考えられます。

一方、費用における減価償却については、当該不動産が棚卸資産であることを考えると減価償却の必要性はないものと考えられますが、一方で、賃料による収益が上がってくるため、収益と費用の対応を考えれば、減価償却を行うことにも一定の合理性があるものと考えられます。これについても会社の事業目的や、当該物件について販売することが主目的で賃貸は短期の付随的なものにすぎないのか、賃貸からも収益を得ようとするのか、その目的と経済実態に応じて判断すべきものと考えられます。

12次のページ