業種別会計の基礎


不動産業
第3回:不動産賃貸業の事業と会計の特徴 (2010.02.03)

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4.不動産賃貸業の会計処理の特徴

(1)通常の賃貸借取引に係る会計処理

通常の賃貸借契約については上記の取引の流れに沿って解説すれば次のようになります。

賃貸する物件の取得または建築

これについては、固定資産の取得の処理を行います。

(借)

固定資産

××× (貸)

現預金又は未払金

×××

テナントの獲得・契約

テナントの獲得においては、通常不動産仲介業者などを通すため仲介手数料や広告料などがかかると考えられます。

(借)

仲介手数料

××× (貸)

現預金又は未払金

×××

広告宣伝費

×××

テナントが決まり、賃貸借契約が締結されると、敷金・保証金と前払家賃を収受します。

(敷金・保証金と前受家賃の受領時の仕訳例)

本ケースは月決めの固定賃料で、前払いを前提とします。

(借)

現預金

××× (貸)

預り敷金

×××

預り保証金

×××

前受賃料

×××

賃貸・賃料の収受・管理

テナント入居後は、毎月賃料を収受するとともに、必要経費が支払われます。これら必要経費は賃貸原価となります。

(収益の振替仕訳例)

(借)

前受賃料

××× (貸)

賃貸収益

×××

(賃貸原価発生時の仕訳例)

(借)

減価償却費

××× (貸)

減価償却累計額

×××

人件費

×××

未払金

×××

固定資産税

×××

水道光熱費

×××

契約終了・精算

解約・退去時には原状回復費用を差し引いて敷金を、また保証金をテナントに返還します。

(返還時の仕訳例)

(借)

預り敷金

××× (貸)

立替金(原状回復)

×××

預り保証金

×××

現預金

×××

(2)預り敷金と建設協力金(預り保証金)の会計処理

敷金は、賃料および修繕の担保的性格を有するもので、償還期限は賃貸借契約の満了時であり、法的には契約期間満了時にはじめて返還請求権が発生するものと考えられています。このため、受け入れ金額をそのまま負債計上することになります。

(3)フリーレントの会計処理

フリーレントとは、入居後の一定期間について賃料を無料とする賃貸借契約をいい、月々の名目賃料を下げずに、賃貸借期間全体の賃料を実質的に値引きするための手法として利用される賃貸借契約の一形態です。フリーレントについては、無料となった期間についてどのように賃料を収益認識するかが論点となります。

例えば当初2カ月をフリーレントの期間とした場合、単純に考えれば3カ月目に受領した賃料から収益計上を開始することになります。

しかし、解約不能条項のあるフリーレント契約では、2カ月のフリーレントは実質的に賃貸借期間全体の家賃の値引きと考えられるため、貸主としては当該契約が2年契約だとすれば、解約不能期間(この場合、24カ月間)で賃料を平均化して収益計上することが必要であると考えられます。すなわち、22カ月分の賃料を24カ月で均等に収益計上することになります。

(4)リース会計

リース取引と不動産賃貸借取引

「リース取引」とは、特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料を貸手に支払う取引を表す会計基準上の概念です。

一方、賃貸借契約は、法律上の概念で、当事者の一方が他方に対して物の使用収益を認め、その対価(賃料)を授受することを内容とする契約をいい(民法601条)両者は実質的にほぼイコールと考えられます。

従来、不動産の賃貸借取引については会計上その取り扱いが明確ではありませんでしたが、「リース取引に関する会計基準の適用指針」においては、土地、建物等の不動産のリース取引(契約上、賃貸借となっているものも含む)について、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかを判定する必要があることが明文化されました。従って、不動産賃貸業を営む場合には、それぞれの賃貸借契約について、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかの判定が必要となります。

ただし、土地については、経済的耐用年数が無限であることから、フルペイアウトのリース取引に該当しないと考えられるため、所有権の移転条項または割安購入選択権の条項がある場合を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定されることとなっています。

オペレーティング・リース取引の会計処理と開示

不動産の賃貸借取引がオペレーティング・リース取引に該当する場合には、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うとされています(リース基準15項)。

また、オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、重要性が乏しい場合を除き、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、貸借対照表日後1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記することとされています。

(5)減損会計

賃貸用の不動産は、通常固定資産として分類されますので、「固定資産の減損に係る会計基準及び同実務指針」が適用されます。減損処理とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理をいいます。減損処理では、①認識・測定をどの単位で行うかを決め(資産のグルーピング)、②その資産グループに減損の可能性があるかを判断し(減損の兆候の有無の判断)、③減損処理を行うかどうかを判断し(減損認識の判定)、④減損処理する金額を決める(減損損失の測定)という四つのステップを経て行われます。③④については、不動産賃貸業特有の留意点は想定されませんが、①②については以下の点について留意すべきと考えられます。

減損認識の単位(資産のグルーピング)

不動産賃貸業においては、一般的に賃貸している土地やビル、マンションなどが対象になってきます。グルーピングの単位としては会社の管理状況に応じて賃貸物件(ビル)単位または支店単位などによることが考えられます。

減損の兆候判定

不動産賃貸業においては、当該物件から得られるキャッシュフローが過去数年間マイナスになっている場合や、当該不動産の時価が著しく下落している場合などには減損の兆候があると判定されると考えられます。

(6)賃貸等不動産の時価の開示

平成20年11月28日に企業会計基準委員会から「賃貸等不動産の時価の開示に関する会計基準及び同適用指針」が公表され、平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されることとなっています。本基準は賃貸等不動産についてその時価を注記事項として開示することを目的としています。

賃貸等不動産は、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益またはキャピタルゲインの獲得を目的として保有される不動産とされており、オフィスビル、商業施設、マンション等の賃貸用不動産は、すべて対象となると考えられます。

賃貸等不動産を保有している場合には、①賃貸等不動産の概要、②賃貸等不動産の貸借対照表計上額および期中における主な変動、③賃貸等不動産の当期末における時価およびその算定方法、④賃貸等不動産に関する損益、を注記することとされています。

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