解説シリーズ 四半期報告制度


四半期決算の会計処理の概要
第5回:固定資産と貸倒引当金の会計処理 (2008.08.11)

新日本ナレッジインスティテュート
新日本有限責任監査法人 公認会計士 友行貴久
新日本ナレッジインスティテュート
新日本有限責任監査法人 公認会計士 七海健太郎

第5回では、固定資産および貸倒引当金に関する簡便的な会計処理について解説します。

1.固定資産の減価償却費の計算(合理的な予算制度の利用)

合理的な予算制度として、固定資産の年度中の取得、売却または除却等の見積もりを考慮した上で減価償却費に係る予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分(あんぶん)する方法により、四半期会計期間または期首からの累計期間の減価償却費として計上することができます。実務的には、年間償却予定額の12分の1を月次で負担させる方法が多くなるのではないかと考えられます。

ただし、期中に取得、売却または除却する固定資産の減価償却費に重要性がある場合には、その部分について適切に反映するよう当該期間按分額を調整することが必要です。この場合は、年間償却予定額の12分の1を月次で負担させるのではなく、例えば、重要な取得が第2四半期にあるのであれば、第2四半期以降の四半期の負担額を多くする調整が必要となり、重要な除却が第3四半期にあるのであれば、第3四半期および第4四半期の負担額を軽くする調整が必要となります。

【簡便計算による数値例】

年間使用し続ける資産A(四半期での減価償却費[Dp]は10)、第2四半期期首で使用開始する資産B(四半期でのDpは8)、第2四半期期末で売却する資産C(四半期でのDpは2)を前提に、四半期決算での減価償却費を算定します。

(ケース1:合理的な予算制度による四半期毎減価償却額の算定)

 

時期

1Q

2Q
Cの売却

3Q
Bの取得

4Q

年間

A

通年使用資産のDp

10

10

10

10

40

B

途中取得資産のDp

 

8

8

8

24

C

途中売却・除去資産のDp

2

2

   

4

合計(年度同様の方法によるDp)

12

20

18

18

68

 

上記の4分の1

       

17

合理的な予算によるDp

17

17

17

17

68

(ケース2:途中取得資産に重要性がある場合の四半期毎減価償却額の調整)

 

時期

1Q

2Q
Cの売却

3Q
Bの取得

4Q

年間

A

通年使用資産のDp

10

10

10

10

40

C

途中売却・除去資産のDp

2

2

   

4

 

合計

12

12

10

10

44

 

上記の4分の1

       

11

B

途中取得資産のDp

 

8

8

8

 

B取得を調整したDp

11

19

19

19

68

 

②-①

5

-3

-1

-1

 
 

③-①

-1

-1

1

1

 

年間の減価償却費を4分の1にした金額が17ですが、それを四半期での減価償却額として使用すると、第1四半期ではBを取得する前であるにもかかわらず減価償却額が増加することとなります。②と①の差額5に重要性がある場合、ケース2のような調整が必要です。


2.固定資産の減損損失

(1)四半期における減損の兆候の考え方

固定資産の減損損失は期末に計上するものではなく、減損の事実があったときに期中のいかなるときでも認識・測定するもので、減損の兆候に始まって、認識、測定というステップを踏んで計上されます。「固定資産の減損に係る会計基準」では、減損の兆候として四つの事象が例示されていますが、四半期での減損の兆候の把握においては、「……使用範囲又は方法について当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて留意する。」とされました。

「固定資産の減損に係る減損会計」での兆候の例示

営業活動から生じる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス

使用範囲又は方法について回収可能性を著しく低下させる変化がある場合

経営環境の著しい悪化の場合

市場価格の著しい下落の場合

つまり、入手可能なタイミングにおいて利用可能な企業内外の情報に基づき、減損の兆候を識別するという主旨から、前年度末等において減損の兆候を把握している場合には、必ずしも四半期会計期間ごとに資産または資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローなどを算定または入手することを求めるのではなく、使用範囲または方法について当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境が著しく悪化する事象が発生したかどうかについて留意し、そのような意思決定や事象の発生があればそれらを減損の兆候ととらえ、回収可能性テストを実施し、使用価値が固定資産の帳簿価額を上回っているかどうかを確認することになると考えられます。

(2)不動産の著しい時価の下落

土地の帳簿価額が著しく下落しているかどうかを把握するために、減損の兆候をとらえるのに路線価や基準地価を用いている例も少なくないと思われます。この点については路線価等が公表される時期にもよりますが、各四半期末の時点において、タイミングよく取り込むことが可能なことも多いのではないかと考えられます。


3.貸倒引当金

四半期決算においても原則として、すべての売上債権の貸倒見積高の算定について「金融商品に係る会計基準」が適用されますが、一般債権の貸倒実績率が前年度の財務諸表の作成において使用した貸倒実績率と著しく変動していないと考えられる場合には、前年度末の決算において算定した貸倒実績率を使用することができます。前年度の貸倒実績率から著しく変動したことにより、見直しを行った後の四半期会計期間において、当該見直し後の貸倒実績率と著しく変動していないと考えられる場合は、当該見直し後の貸倒実績率を使用することができます。この場合の貸倒実績率の見直しは、会計方針の変更には当たりません。

なお、債権管理は通常、期中を通じて実施されていることが想定されており、一般債権、貸倒懸念債権および破産更生債権等の区分ができていることが前提となっていますが、貸倒懸念債権および破産更生債権等については、簡便的な処理は定められていません。四半期ごとの決算では、当該取引先の財務内容等の情報が不足しているなど、貸倒見積額の算定が困難な場合も想定されます。そのような場合、貸倒懸念債権に関しては、「金融商品会計に関する実務指針」にある財務内容評価法による50%基準によることもできるのではないかと考えられます。

債権区分 貸倒実績率の著しい変動 貸倒見積高の算定方法

一般債権

前年度末/四半期と比して著しい変動がない。

原則、年度と同様

例外、前年度(前四半期)の貸倒実績率を使用

前年度末/四半期と比して著しい変動がある。

年度と同様

貸倒懸念債権・破産更生債権等

年度と同様