解説シリーズ 四半期報告制度


四半期決算の会計処理の概要
第1回:特有の処理および簡便的な処理 (2008.06.17)

新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 友行貴久
新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 七海健太郎
1.はじめに

平成20年4月1日以後開始する事業年度から金融商品取引法による四半期開示制度がスタートします(金融商品取引法における四半期報告制度の概要 第1回参照)。これに合わせて企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下、四半期会計基準)および企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、四半期適用指針)が適用となりますが、今回のシリーズでは、そのうち、四半期特有の処理・簡便的な処理に焦点を当てて解説を行います。

なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.四半期特有の処理

3カ月という短い会計期間の中で当該四半期の属する年度の財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況に関する情報を適切に提供するため、認められているのが、四半期特有の会計処理です。その概要は以下の表のとおりです、詳細については本シリーズ第2回以降で解説を行います。

項目 概要 掲載回
原価差異 原価差異が季節的変動に起因して発生したものであり、かつ、原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれる場合に、継続適用を前提として繰延処理ができる。 第2回
後入先出法 四半期会計期間末の数量が期初より少ないが、年度末までに不足分を補充することが合理的に見込まれる場合に、継続適用を前提として、再調達原価に基づき売上原価を調整し、差額を繰延処理できる。 第2回
税金費用 累進税率が適用されるような場合には、年度の法人税等の計算に適用される税率を予測して計算する。ただし、年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期利益に乗じて税金費用合計を計算することができる。 第3回
3.簡便的な処理

四半期特有の処理を除いて、原則は年度と同一の会計処理方法に準拠すべきとされていますが、四半期報告には45日以内にレビュー報告書を入手した上での開示が求められるなど、迅速性が要求されるため、四半期財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な会計処理が認められています。その概要は以下の表のとおりです。

項目 概要 掲載回
売上債権
(貸倒引当金)
一般債権の貸倒実績率について、著しく変動していないと考えられる場合には、前年度の決算で使用した貸倒実績率を使用できる。 第5回
棚卸資産 実地棚卸を省略することができる。  
収益性の低下による簿価の切下げについて、収益性が低下していることが明らかである場合のみ、実施すれば足りる。 今回
原価差異配賦方法について、年度と比較して簡便な処理とすることができる。 第2回
経過勘定 合理的な算定方法による概算額での計上とすることができる。  
固定資産
(減価償却費)
減価償却費の算定において合理的予算を利用することができる。 第5回
定率法による減価償却費の年度計上額を期間按分する方法により計上することができる。  
前年度末等において所有する資産又は資産グループについて全体的に減損の兆候を把握している場合には、減損の兆候の把握について、四半期毎に資産グループごとの損益・キャシュフローや市場価格について算定・入手することは求められていない。 第5回
法人税等 加減算項目や税額控除項目を重要なものに限定するなど、簡便的な税額の計算方法を採用することができる。 第4回
繰延税金資産の回収可能性の判断において、経営環境等に著しい変化が生じておらず、一時差異等の発生状況について大幅な変動がないと認められる場合には、前年度末に使用した業績予想やタックス・プランニングを利用することができる。 第4回
重要性が乏しい連結会社において、経営環境等に著しい変化が生じておらず、一時差異等の発生状況について大幅な変動がない場合には、前年度の税効果会計適用後の法人税等の負担率を使用して計算することができる。 第4回
退職給付引当金 期首に算定した退職給付費用について、期間按分する方法により計上することができる。  
連結財務諸表 合理的な範囲で債権債務及び取引の相殺消去での差異について、調整せずに相殺消去することができる。  
棚卸資産の未実現損益消去に使用する損益率について、合理的な見積計算によることができる。取引状況に大きな変化がないと認められる場合、前年度使用した損益率や合理的な予算制度に基づく損益率を使用することができる。  
企業結合会計 持分プーリング法での、みなし結合日から企業結合日前日までの内部取引相殺消去について、合理的な見積りによる概算額で相殺消去することができる。  

簡便的な処理の主なものの詳細については本シリーズ第2回以降で解説を行います。今回は、四半期報告制度と同時に適用となる棚卸資産会計に関する収益性の低下についての簡便的な処理と、棚卸資産会計の適用初年度の処理について解説を行います。

(1) 棚卸資産の収益性の低下に関する簡便的な処理
 

四半期会計期間末においては、通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価切り下げに当たっては、収益性が低下していることが明らかな棚卸資産についてのみ正味売却価額を見積もり、簿価切り下げを行うことができるとされました。

収益性が低下しているかどうか微妙なものは、年度決算においてはその有無を明らかにする必要がありますが、四半期の場合は必ずしも簿価切り下げを求めていません。

なお、収益性が低下していることが明らかかどうかは、棚卸資産を管理する製造部門または営業部門の損益の状況や、品目別の損益管理を行っている場合における当該損失の発生状況などにより判断することになります。

棚卸資産の収益性の低下に関する簡便的な処理の内容については、金融商品取引法における四半期報告制度の概要 第2回の棚卸資産3を参照ください。

(2) 適用初年度の処理
 

企業会計基準9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」の適用初年度において簿価切下額が多額に発生し、それが期首の棚卸資産に係るものである場合には、特別損失に計上することができますが、この処理に対する簡便的な処理はありません。

すなわち、特別損失に計上する方法を採用する場合には、収益性の低下が明らかなもののみに限定した処理を行うのでなく、年度決算と同様の検討を行い、帳簿価額の切り下げを行う必要があると考えます。

また、「棚卸資産会計基準」で2番目に定められる方法(基準第21項(2))の期末在庫とは、四半期末在庫と読み替えて適用するものと考えられます。