役員退職慰労引当金の会計処理について(2008.03.06)
新日本監査法人 公認会計士 湯本純久
| (1)背景
役員退職慰労金の会計処理については、従来、各役員の期末要支給額を役員退職慰労引当金として計上する方法と、実際に役員退職慰労金を支給するときに費用処理する方法の二つの会計処理が行われていました。日本公認会計士協会はこの状況を踏まえ、これまでの監査・保証実務委員会報告第42号「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金に関する監査上の取扱い」を改正した「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い」(以下、委員会報告)を、平成19年4月に公表しました。 この委員会報告は、役員退職慰労金の内規による支給がおおむね実行されている場合には、引当金を計上する方法が多く見られるようになってきたことを指摘し、役員賞与についての費用処理とともに、役員に係る報酬等全般について発生主義による費用処理が必要と考えられるとしたことから、支給時に費用処理する方法から、役員退職慰労引当金を計上する方法へ変更する事例が多くなるものと予測されています。 |
| (2)適用時期
この委員会報告の公表を契機として支出時に費用処理する方法から引当金を計上する方法に変更することが考えられますが、その場合の変更は、会計処理の変更として取り扱われます。本改正は、平成19年4月以後開始する事業年度から適用されますが、同日前に開始する事業年度から適用することもできるとされたため、早期適用の事例があります。また、3月決算会社の中間決算(平成19年9月中間)においても、この委員会報告を契機に役員退職慰労金の会計処理を支給時に費用処理する方法から引当金を計上する方法に変更する事例が開示されています。 以下、役員退職慰労引当金に関する会計上の留意事項について取り上げますが、文中意見にわたる部分は、私見であり、当法人の公式見解ではないことをあらかじめ申し添えます。 |
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役員退職慰労金の性格は、退職する役員の在任期間中の役務提供にかかわるもので、役務提供への対価として後から支払われるものであると考えられています。役員退職慰労金は、株主総会による承認決議を前提とするため、株主総会承認決議前の段階では、法律上の債務ではありませんが、会計上は企業会計原則注解18に示す負債性引当金の性質を有すると考えられています。 |
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これまで、役員退職慰労金については、株主総会決議時あるいは支出時に費用処理する方法と引当金を計上する方法が長らく並存してきたのが実情ですが、今回の委員会報告では、以下の要件を満たす場合には、各事業年度の負担相当額を役員退職慰労引当金に繰り入れなければならないとしています。 |
| (1) | 役員退職慰労金の支給に関する内規に基づき、在任期間・担当職務等を勘案して支給見込額が合理的に算定されること |
| (2) | 当該内規に基づく支給実績があり、このような状況が将来にわたって存続すること(設立間もない会社等のように支給実績がない場合においては、内規に基づいた支給額を支払うことが合理的に予測される場合も含む) |
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役員退職慰労引当金は、会社の役員(取締役・監査役・執行役等)の将来における退職慰労金の支払いに備えて設定されるものであり、当該支給見込額のうち各事業年度の負担相当額は、原則として、営業費用に計上することになります。 |
| 引当金の要件 | 役員退職慰労金 |
| 将来の特定の費用または損失 | 将来行われる退職慰労金の支払い |
| 発生が当期以前の事象に起因 | 当期以前の存任期間の役務提供により発生 |
| 発生の可能性が高く | 内規に従い支給する実績がある |
| 金額を合理的に見積もることができる | 内規により合理的に算定 |
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税務上の役員の退職給与の損金算入時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日を原則的な認識時点としていますが、実際に支払った日に認識することも認められています(確定日基準と支払日基準)。 役員退職慰労金は、退職という事実に起因する給与と考えられるため、原則としてその事実に伴う債務が確定する株主総会の決議日の属する事業年度に損金算入されます。株主総会において具体的な金額を定めて決議した場合には、その決議日が基準となりますが、実務的には株主総会で具体的な金額を取締役会に一任する旨を決議することが多いと思われます。この場合には、「具体的に確定した日」は総会決議日ではなく取締役会で具体的な金額を決議した日が基準となります。また、支払基準を採用する場合には、損金経理が条件となっており、仮払処理は認められないことに留意が必要です。 従って、上記損金算入の要件が満たされる以前の、役員退職慰労引当金を繰り入れた時点では、当該引当金繰入額は損金に算入されないことから、税務上は加算処理となります。株主総会もしくは取締役会で具体的な金額が決議されるか、実際に支払われた際に損金算入されることになります。 |
- 会計上の変更および誤謬の訂正に関する会計基準
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第3回 表示方法の変更と会計上の見積もりの変更 (2010.07.29)
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