解説シリーズ


棚卸資産の評価に関する会計基準:第2回(2008.06.26)

新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 湯本純久
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第1回では、基準が設定された経緯損益計算書の表示等を取り上げましたが、今回は、通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準、収益性低下の判断および簿価切り下げの単位、洗替え法と切放し法の選択適用を取り上げます。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます。

1.通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準
<ポイント>
期末に保有する棚卸資産の収益性が低下した場合は、正味売却価額を貸借対照表価額とする
収益性が低下していないことが明らかな場合は、正味売却価額を見積もる必要はない
正味売却価額は観察可能か
観察できないときは合理的に算定された価額を売価とする
合理的に算定された価額とは、期末前後での販売実績に基づく価額や契約により取り決められた一定の売価を用いる場合がある
小売業において売価還元法を採用している場合の留意点
(1) 正味売却価額=売価-(見積追加製造原価+見積販売直接経費)
 

通常の販売目的で保有する棚卸資産は取得価額をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には収益性が低下しているとみて当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。取得価額と当該正味売却価額との差額は、当期の費用として処理します(棚卸資産会計基準第7項)。ここで正味売却価額とは売却市場における売価から見積追加製造原価および見積販売直接経費を控除したものをいいます。見積販売直接経費は、一般的には、販売手数料、物流関連費など販売の都度、把握できる費用が考えられ企業の実態に合わせて判断することになります。

内部統制の観点から期末時点での棚卸資産の評価は、決算財務報告プロセスであるため、いかに効率よく正確に棚卸資産の正味売却価額が低下している事実を把握し集計する手続きを構築することが課題となります。

(2) 収益性が低下していないことが明らかでない場合
 

実務上の事務負担を配慮して収益性が低下していないことが明らかであり、事務負担をかけて収益性の低下の判断を行うまでもない場合には、正味売却価額を見積もる必要はないとされています(棚卸資産会計基準第48項)。ただし、これに該当するケースは、過去からの販売が好調で将来も安定的に十分な粗利率が高い棚卸資産の品目に限定されるものと考えられます。内部統制の手続きとして、収益性が低下していることが明らかかどうかは、棚卸資産を管理する製造部門または営業部門の損益の状況や、品目別の損益管理を行っている場合における当該損益の発生状況などにより判断することになります。そのため、自社で収益性が低下している事実としてどのような資料が利用できるかを把握しておく必要があります。

(3) 正味売却価額に代わる方法
 

営業循環過程から外れた滞留または処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ以下のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するように処理します。

① 帳簿価額を処分見込価額(ゼロまたは備忘価額を含む)まで切り下げる方法
② 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

これまでの実務でも棚卸資産に関する社内規定を設けて、一定の回転期間を超える棚卸資産について規則的な簿価切り下げを行い、収益性の低下を財務諸表に反映させてきたものと思われます。社内規定が棚卸会計基準に照らして収益性の低下を反映しているといえない場合には、現状の社内規定を見直す必要があります。内部統制の手続きとしては、当該取り扱いが棚卸資産会計基準に従ったものであるか、当該取り扱いを変更する必要があるか否かの確認を行うべきであると考えます。

(4) 再調達原価
 

製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には継続して適用することを条件として再調達原価や最終仕入原価を棚卸資産の評価する時価とすることができます。実務に配慮し最終仕入原価を用いることも認められています。

(5) 小売業において売価還元法を採用している場合の留意点
 

スーパー、百貨店などの小売店では、棚卸資産の評価について売価還元法を採用しているケースが多いと考えられます。棚卸資産会計基準においては、売価還元法を採用している場合においても正味売却価額が帳簿価額よりも下落しているときには、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることが必要であるとされます。他方、値下額および値下取り消し額を除外した売価還元低価法を採用している企業は、売価還元低価法の算式により算出した帳簿価額をもって収益性の低下に基づく簿価引き下げ額を反映したものと見なすことができるとしています。売価還元低価法の算式により算出した帳簿価額は、収益性の低下に基づく簿価引き下げと必ずしも整合するものではありませんが、棚卸資産会計基準においては、実務上の取り扱いを考慮して、値下額等が売価合計額に適切に反映されている場合には、収益性の低下に基づく簿価引き下げ額を反映したものと見なすことができるとされています(棚卸資産会計基準第13項)。

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