解説シリーズ 内部統制


内部統制の実務Q&A
第4回:「その他の業務プロセス」 (2008.06.09)

新日本監査法人 公認会計士 佐藤秀明
新日本監査法人 公認会計士 辰野 健
Q2. 財務報告リスクの識別について教えてください。
Answer
1. 財務報告リスクの識別
 

財務報告リスクを的確に識別するためには、仕訳の生成に必要な情報(会計情報)を分析し、当該情報が業務プロセスで、どのように転換されて仕訳につながっているかを確かめることが重要です。例えば、売上仕訳を生成するための会計情報として「品名・単価・数量・売上日付・勘定科目」が必要であった場合、これらの会計情報が業務プロセスで、どのように捕捉・入力・転換・転送・計算・起票されるか(情報の転換点)に着目します。リスクは一般的に、この情報の転換点で発生します。

また、情報の転換点で発生するリスクは「情報が架空であるリスク(正当性)」「正確でないリスク(正確性)」「網羅的でないリスク(網羅性)」「維持継続されていないリスク(維持継続性)」といった観点(情報処理目的の観点)で考えることが有効です。ただし、これは、あくまでも識別方法の例であり、このような観点からとらえられる、すべてのリスクを識別する必要があるわけではなく、識別するのは財務報告に「重要な」虚偽記載が発生するリスクです(<表1>参照)。なお、財務報告が信頼できるためには、財務報告が適正であるための要件(アサーション)を満たす必要があることから、リスクはRCMで評価対象とした勘定科目のアサーションに関連付けることが必要です。

  ■表1 情報の転換点とリスクの識別の例
  情報の転換点 具体例 財務報告リスクの例
会計事象の捕捉 会計事象の対象となる事象(取引)を捕捉する時点 出荷
架空の出荷情報を捕捉する
誤った出荷情報を捕捉する
出荷情報の捕捉を漏らす
記録・入力 取引が企業の帳票に記録される時点や、アプリケーションに入力される時点 販売管理システムへの入力
架空の出荷情報を入力する
出荷情報の入力を誤る
誤った出荷情報を入力する
計算・転送 会計仕訳につながる情報が帳票やアプリケーション上で計算、転送される時点 売上計上仕訳の作成
月次出荷一覧表の集計を漏らす、誤る
会計システムへの転送を漏らす、誤る
起票 総勘定元帳に計上される時点 仕訳の計上
架空の売上仕訳を計上する
売上仕訳を誤る
2. 財務報告リスクを識別する上で誤りやすい例
 

財務報告リスクを識別する上で、特に誤りやすい典型的な例として、<表2>のようなものがあります。

  ■表2 財務報告リスクを識別する上で誤りやすい例
誤ったケース 具体例 誤っている理由
財務報告リスクではないリスクを識別しているケース
納品遅延を起こす
製品不良が発生する
在庫の欠品を起こす
違法な契約を締結する
内部統制報告制度は財務報告リスクを対象とするため、「業務の有効性及び効率性」や「法令等の遵守」に関するリスクは直接、関係ない
コントロールの運用上の不備をリスクと識別しているケース
現品と出荷指示書の照合を誤る
承認を漏らす
照合や承認というコントロールの実施を誤ったり、漏らしたりするのはコントロールの運用上の不備
リスクが複数のリスクから生じる結果となっているケース
売上が計上されない
売上が計上されないのは複数の要因が重なり合って起きる結果であり、この前に出荷実績入力漏れや、仕訳の入力漏れといったリスク要因があるはずである