解説シリーズ 内部統制


内部統制の実務Q&A
第2回:「全社的な内部統制」 (2008.03.31)

新日本監査法人 公認会計士 佐藤秀明
新日本監査法人 公認会計士 辰野 健
Q1. 全社的な内部統制の評価手順について教えてください。
Answer
1. チェックリストの作成
 

内部統制の目的が達成されるためには、内部統制の6つの基本的要素がすべて適切に整備・運用されることが必要となります。そこで、6つの基本的要素ごとに評価項目を列記したチェックリストを作成し、評価項目に対する回答から、有効性を評価することが効果的・効率的です(<図1>参照)。

■図1 チェックリストの例 チェックリストの例
2. 評価項目の決定
 

実施基準には、全社的な内部統制について基本的要素ごとに42の評価項目が例示されており、さらに全社的な内部統制の形態は、企業の置かれた環境や事業の特性などによってさまざまです。企業ごとに適した内部統制を整備・運用することが求められるとされ、必ずしも当該例によらない場合があること、また当該42の評価項目による場合でも、適宜、加除修正することとされています。

よって、実施基準の42項目をベースにCOSOなどの評価項目を参考に、企業ごとに適した評価項目を決定します。ただし、監査人は実施基準の42項目の例に照らして、企業の状況に即した適切な内容になっているかを検討することから、評価項目の削除には慎重に対応すべきです。また、実施基準の評価項目の例は抽象的な表現が多いため、評価対象となる拠点において同一の評価が実施できるように、評価項目を具体的な質問に変更することが有効です。

3. 統制の状況の記載
 

チェックリストの評価項目に回答することで、企業の統制の状況を文書化していきます。特に、全社的な内部統制は経営者が自ら回答することが重要ですが、現実的な方法として、評価項目に応じて関係する部署の担当者が回答を行い、それを事務局などが取りまとめ、全体的な整合性などの検討を行った後、経営者がそれを確かめる方法などが考えられます。

また、統制の状況は第三者が理解できるように、5W1Hを考慮しながら記載し、さらに評価業務が効果的・効率的に行えるように、チェックリストには具体的な資料名および記載個所(条文番号など)、頻度、主管部署・関係部署を記載することが望まれます。

4. 現状の統制の改善
 

現状の統制の状況を文書化していくと、現状の統制が不足している評価項目がある場合が多いと考えられます。また、これを機に企業グループで統一的な管理体制を構築することもあると思われます。その場合、改善後にあらためて統制の状況を記載することは非効率であるため、制度の適用前に必ず改善することを前提に、統制の状況には改善後の統制を記載し、改善するまではその部分に下線を引いておくことなどの対応で、まずは統制の状況の文書化を終わらせてしまうことも実務的です。

なお、実施基準には内部統制の重要な欠陥となる可能性の高い不備として、全社的な内部統制の不備の例が6つ挙げられていますが、当該項目に関する統制が不足している場合には、必ず改善しておく必要があります。