解説シリーズ 決算対応


決算対応 ― 今すべきことシリーズ
第2回:工事契約に関する会計基準 (2009.02.25)

新日本ナレッジインスティテュート
新日本有限責任監査法人 公認会計士 井澤依子
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工事契約会計基準(注)は、平成21年4月1日以後開始する事業年度から適用されるため(早期適用も可)、3月決算の場合、平成22年3月期から適用が開始されます。

ここでは、工事契約会計基準の論点を確認するとともに、適用直前のこの段階で準備すべきことをチェックしておきたいと思います。

(注) 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」

1.工事契約会計基準の論点確認

(1)適用範囲

工事契約会計基準の適用範囲は、以下のとおりです。建設業にかぎらず、工期の長短にかかわりなく適用されます。

  • 請負契約のうち、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うもの
    (土木、建築、造船、一定の機械装置の製造等)

  • 受注制作のソフトウエア

(2)工事契約会計基準の概要

これまで長期請負工事に関する収益の計上については、工事進行基準と工事完成基準の選択適用が認められていましたが、工事契約会計基準が公表されたことにより、成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用することとなりました。

工事進行基準適用の要件である「成果の確実性が認められるための3要素」は、以下のとおりです。

工事収益総額の信頼性

工事原価総額の信頼性

決算日における工事進捗(しんちょく)度の信頼性

3要素の解説については、リンク先をご確認ください。

詳細→

解説シリーズ 工事契約に関する会計基準 第1回 3.工事進行基準の適用の要件

(3)工事進行基準の会計処理

(2)で述べたとおり、3要素を満たす場合には工事進行基準を適用することとなるため、工事収益総額、工事原価総額および決算日における工事進捗度を合理的に見積もり、これに応じて当期の工事収益および工事原価を損益計算書に計上します。また工事進行基準を適用した結果、工事の進行途上において計上される未収入額は金銭債権として取り扱い、貸倒引当金の対象となります。

工事進行基準の適用に当たっては、その他以下のポイントにご留意ください。

工事の進行途上における変化

会計処理

事象の変化により、工事進行基準の適用要件を満たすこととなったとき

その時点より工事進行基準が適用される

事後的な事情の変化により、工事進行基準の適用要件を満たさなくなったとき

それ以降は工事完成基準を適用し、それまでの会計処理について事後的な修正はしない

3要素の見積もりが変更されたとき

見積もりの変更による影響は、その時点での損益として処理される

なお、四半期決算においては、工事原価総額の見積もりについて簡便的な取り扱いが認められています。

詳細→

解説シリーズ 工事契約に関する会計基準 第2回 3.四半期決算における取り扱い

(4)工事損失引当金の検討

工事契約会計基準において、工事損失引当金の取り扱いが明らかにされていますが、引当金の要件を満たす場合に工事損失引当金を計上する実務は、従来、相当程度行われていると考えられます。

従って、平成21年3月期において工事契約会計基準を早期適用しない場合であっても、工事損失引当金の検討は必要と考えられます。

  • 工事原価総額等が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、将来見込まれる損失を工事損失引当金として計上する。

  • 工事損失引当金は、工事進行基準であるか工事完成基準であるかにかかわらず、引当金の要件を満たす場合には計上する。

(5)適用初年度の取り扱い

適用初年度における適用対象については、以下の表をご確認ください。なお、適用初年度においては、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱います。

区分

適用対象

原則

工事契約会計基準を適用する最初の事業年度以後に着手する工事契約から適用

例外

工事契約会計基準を適用する最初の事業年度の期首に存在する工事契約のすべてについて、一律に適用

過年度の工事の進捗に見合う損益は、特別利益または特別損失に計上。この方法を適用した旨および過年度の工事の進捗に見合う工事収益の額と工事原価の額を注記。

(6)税効果への影響

工事契約会計基準が公表されたことに伴い、平成20年税制改正がなされています(新旧法人税法の主要な相違点については、以下の表をご確認ください)。

これまでは、税務上工事進行基準が強制される長期大規模工事の対象については、会計上も工事進行基準を適用するケースが見られたと思います。しかし今後は、税務上の長期大規模工事の範囲が拡大した一方で、3要素を満たさない場合には、会計上工事進行基準を適用することができないため、会計と税務が乖離(かいり)するケース、すなわち税効果の対象となるケースが増加すると考えられます。

<新旧法人税法の相違点>

新旧法人税法の相違点

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