解説シリーズ 会社法


臨時計算書類の作成基準について(2007.09.25)

新日本監査法人 公認会計士 目黒幸二
4.臨時計算書類特有の会計処理
(1)総論

臨時計算書類は、実績主義に基づいて、臨時会計年度を一会計期間と見た上で、原則として、年度決算に適用される会計処理の原則および手続きに準拠して作成すべきとされています。一般原則としては、年度決算と同様に法令および定款への準拠性および会計処理の原則および手続きの継続性が要求されています。

しかし、臨時決算は年度の途中であるという特殊性から、ある程度の簡便な方法も許容されるものと考えられるため、原則として「中間財務諸表作成基準」(企業会計審議会)に準じて作成することとしています。そのため、年度決算の会計処理とは異なる臨時決算特有の会計処理が一部認められています。

(2)各論
    臨時決算特有の会計処理

臨時計算書類の会計処理について、四半期会計基準等とは異なり本作成基準では詳細には記載されていない点が特徴です。これは、臨時計算書類を作成する目的はさまざまなものが考えられるため、その目的を損なわない限りさまざまな処理が考えられることから、特に限定的に作成基準を示すべきではないとの配慮があるものと考えられます。

臨時決算は、原則として年度決算に適用される決算手続で作成しなければなりませんが、実務上期末でないと実施できない決算手続があるため、それらに関しては簡便な決算手続によることができます。

なお、本作成基準に記載されているのはあくまで例示であり、実務上は四半期会計基準や同適用指針を参考として、そのほかの場面においても簡便な方法が容認されることも考えられます。

(表3)臨時決算特有の会計処理
棚卸高の把握 帳簿棚卸
減価償却(定率法) 年度償却費の期間按分(あんぶん)
退職給付費用 年度見積額の期間按分
法人税等の税額計算
および税効果
年度決算と同様(ただし見積実効税率を
臨時税引前純損益に乗じる簡便法可)
    臨時決算と年度決算の関係

臨時決算はあくまで年度途中であるため、評価基準として低価法を採用している場合、臨時決算日時点では評価損を計上しても、事業年度末には時価が回復して評価損が計上されないこともあります。

例えば、棚卸資産についてのいわゆる低価法やその他有価証券に係る部分純資産直入法を採用している場合です。

一方、収益性の低下により帳簿価額を切り下げる会計処理(減損)に関しては、臨時決算といっても事業年度末と同様に厳格に判断しなければなりません。そのため、事業年度末での減損額の戻し処理は慎重に対応しなければなりません。

(表4)減損処理額に関する年度決算での戻し処理の例
市場性のある株式 年度での洗替処理もあり得る
時価のある債券 信用リスクによる減損の場合、慎重に対応
市場性のない株式 洗替処理の必要性は乏しい
固定資産の減損 年度での追加はあっても戻しはない(注)
(注)「棚卸資産の評価に関する会計基準」の適用の際も同様と考えられます。
    会計方針の変更

会計方針を変更する場合、会計方針の首尾一貫性の観点から、原則として、最初の臨時会計年度から変更しなければならないとされています。なお、本作成基準では、会計方針の変更の変則的なパターンが2つ紹介されています。

    臨時決算が複数回行われる場合

臨時計算書類では、会社法および会社計算規則による分配可能額の算定が洗替処理によることから、臨時決算手続は累計方式によっています。

3月決算会社の場合、第1回目の臨時決算日が6月末、第2回目の臨時決算日が9月末だとしますと、第2回目の臨時損益は、7月から9月までの分を集計するのではなく、第1回目の損益を洗い替えて、あらためて4月から9月までの分の累計を集計することになります。

また、臨時決算はあくまで臨時ですから、事業年度の決算はそれとは別に、10月から翌年の3月までの分を集計するのではなく、4月から翌年の3月分の1年間を対象とします。

    注記事項

臨時計算書類において必要とされる注記事項は、事業年度に準じて記載することとされ、特に臨時決算に特有の例外はありません。

ただし、継続企業の前提に係る評価期間については、少なくとも臨時決算日が属する事業年度末日までとされ、修正後発事象については、臨時計算書類に係る会計監査人の監査報告書日までに発生した事象につき、その影響を反映させるために臨時計算書類を修正することとされています。

なお、注記事項に関しては、本作成基準の参考資料1として記載例が添付されています。