解説シリーズ 会社法


臨時計算書類の作成基準について(2007.09.25)

新日本監査法人 公認会計士 目黒幸二
1.臨時計算書類制度の概要
(1)臨時計算書類を作成する会社の範囲

臨時計算書類は会社法上の計算書類ですが、必要性を感じた会社が自らの判断で任意に作成する計算書類であり、すべての会社に作成が強制されるものではないことに留意しなければなりません。また、臨時計算書類は個別決算のみであり連結決算には認められておらず、上場会社に限らずすべての会社が採用できることが特徴です。

(2)臨時計算書類が利用されるケース
    配当財源の確保

旧商法では、年度末剰余金を財源とした期末配当、残った剰余金を基礎とした翌年度の中間配当だけが認められていました。つまり、配当は年2回、財源は過去の剰余金に限定されていたわけです。

会社法では、財源さえあれば随時の配当(利益還元機会の弾力化)が可能となり、財源についても吸収型再編受入行為による増減、自己株式の取得・処分による増減などの進行年度における増減額も考慮して算定することとなり、大幅な改正がなされています。

随時の配当を行う際に、残った剰余金だけでは財源不足となる場合には、期中に稼得した利益を加えれば、財源が拡大して配当が可能となります。この場合、期中の損益を確定させる必要がありますが、月次決算のような簡便な決算手続だけでは十分ではないことから、会社法上の正式な計算書類として臨時計算書類が作成されます。

配当財源に加算する利益を算出する目的で臨時計算書類を作成するのは、配当財源が十分でないベンチャー企業や、業績不振を当期で挽回(ばんかい)したような会社が考えられます。

    財産状況(純資産の確定)の適時な把握

本作成基準では、上場会社等において半期報告書制度が定着し、四半期報告制度もなされている一方で、年1回の計算書類の作成しかなされない会社法においても、株主や債権者に対する適時な財産状況等の開示制度を整備することが重要であると考えられたことも、臨時計算書類制度の導入の背景とされています。

買収、合併、会社分割等の企業再編が決算日時点で行われない場合、会計処理の前提となる対象会社の資産や負債の帳簿価額を確定させるために仮決算が必要となりますが、利害が対立する相手方に納得してもらうために、会計監査が必要となる会社法上の正式な計算書類として臨時計算書類が作成されることが考えられます。

また、子会社を解散した場合、清算手続が結了した後に残余財産が分配されるのでは時間がかかるために、年度決算を待たずに臨時決算を行い、剰余金の多くを配当させてしまうことで投資の早期回収を図るような場合に利用されることも考えられます。

(3)臨時計算書類制度の概要

臨時計算書類は、臨時という名称が付いているものの、会社法に基づく正式な計算書類であることに変わりはないため、会計帳簿に基づき臨時貸借対照表および臨時損益計算書を作成し、表示に関しても年度の計算書類と同様に取り扱うこととされています(会社計算規則第89条、第92条等)。

さらに、会社法第441条、第442条等により、以下のような年度の計算書類とほぼ同様な取り扱いが必要となります。

監査役または会計監査人(会計監査人設置会社の場合)による監査
取締役会(取締役会設置会社のみ)の承認
株主総会の承認
臨時計算書類の備置きおよび閲覧

なお、会計監査が無限定適正意見である等の要件(会社計算規則第163条)を満たせば株主総会の承認は不要となります。

ただし、総会招集通知の添付、総会での提出、提供、報告などが求められておらず、公告もされないため、株主および債権者は閲覧等により詳細を把握する必要があります。

また、臨時計算書類作成後適切な監査期間を経て監査報告がなされ、取締役会および株主総会の承認により決算が確定するとされているだけであり、四半期報告制度のいわゆる45日ルールのような確定期間に関する厳格な規定はありません。