解説シリーズ 会社法


会社法施行に伴う会計基準等
第2回:株主資本等変動計算書の導入 (2008.04.02)

新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 井澤依子
新日本ナレッジインスティテュート
新日本監査法人 公認会計士 若林恒行

1.株主資本等変動計算書の作成目的

会社法において、株式会社は、株主総会または取締役会の決議により、剰余金の配当をいつでも決定でき、また、株主資本の計数をいつでも変動させることができることとされたため、貸借対照表および損益計算書だけでは、資本金、準備金および剰余金の数値の連続性を把握することが困難となりました。そこで貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために、株主資本等変動計算書を作成することになりました。

旧商法の利益処分案(損失処理案)と株主資本等変動計算書を比較すると、前者は期末時点における未処分利益または未処理損失が、株主総会承認後にどのように処分されるかを示していたのに対し、後者では期首から期末までにかけて、純資産の部の各項目がどのように変動したかを示す点で大きな相違があります。

2.株主資本等変動計算書の表示等

企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(2005年12月 企業会計基準委員会)および企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」(05年12月 企業会計基準委員会)においては、以下のとおり株主資本等変動計算書の表示等に係る規定がありますが、会社法上もほぼ同様の規定となっており、金融商品取引法上と会社法上で表示を変える必要はないと考えられます(なお、会社法上は(1)の規定はありません)。

(1)

株主資本等変動計算書の表示は、純資産の各項目を横に並べる様式により作成します。ただし、純資産の各項目を縦に並べる様式により作成することもできます(財規の様式は横様式のみであるため、金融商品取引法上の開示においては、横様式しか採り得ません)。

(2)

株主資本等変動計算書の表示区分は、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」に定める貸借対照表の純資産の部の表示区分に従います。

(3)

株主資本等変動計算書に表示される各項目の前期末残高及び当期末残高は、前期および当期の貸借対照表の純資産の部における各項目の期末残高と整合したものでなければなりません。

(4)

貸借対照表の純資産の部における株主資本の各項目は、前期末残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は変動事由ごとにその金額を表示します

(5)

連結損益計算書の当期純利益(当期純損失)は、連結株主資本等変動計算書において利益剰余金の変動事由として表示します。また、個別損益計算書の当期純利益(当期純損失)は、個別株主資本等変動計算書においてその他利益剰余金またはその内訳科目である繰越利益剰余金の変動事由として表示します。

(6)

貸借対照表の純資産の部における株主資本以外の各項目は、前期末残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は純額で表示します。ただし、当期変動額について主な変動事由ごとにその金額を表示(注記による開示を含む)することができます。

3.株主資本等変動計算書の注記事項

株主資本等変動計算書には、次に掲げる注記事項を注記します。

<連結>
金融商品取引法 会社法
(1) 発行済株式の種類および総数に関する事項 (連結財規77)
(1) 発行済株式の総数(会社計規137一)
(2) 発行済株式の種類および総数に関する事項(連結財規78)
(3) 新株予約権および自己新株予約権に関する事項(連結財規79)
(4) 新株予約権の目的となる株式の数(会社計規137四)
(4) 配当に関する事項(連結財規80)
   
   
(2) 期中に行った剰余金の配当に関する事項(会社計規137二)
(3) 年度の末日後に行う剰余金の配当に関する事項(会社計規137三)

<個別>
金融商品取引法 会社法
(1) 発行済株式の種類および総数に関する事項(財規106)※
(1) 発行済株式の数(会社計規136一)※
(2) 自己株式の種類および株式数に関する事項(財規107)
(2) 自己株式の数(会社計規136二)
(3) 新株予約権および自己新株予約権に関する事項(財規108)※
(5) 新株予約権の目的となる株式の数(会社計規136五)※
(4) 配当に関する事項(財規109)※
   
   
(3) 期中に行った剰余金の配当に関する事項(会社計規136三)※
(4) 年度の末日後に行う剰余金の配当に関する事項(会社計規136四)※
※は省略可能な項目。

金融商品取引法において、連結財務諸表を作成している場合には、個別に係る(1)(3)(4)の記載は要しないとしています。

また、会社法において、連結計算書類を作成する会社は個別に係る(2)以外は省略できるとしており、連結財務諸表(計算書類)作成会社について、個別の注記が簡略化される点、会社法と金融商品取引法上で大幅な相違はありません。

このように連結と比較して個別の注記が簡略化されているのは、現在の情報開示の中心が連結であることから、注記事項は、原則として、連結株主資本等変動計算書に記載することとし、連結株主資本等計算書と個別株主資本等変動計算書の注記内容が異なる自己株式の種類および株式数に関する事項については、個別株主資本等変動計算書にも記載することとしたものです(会社法上は個別のみ)。

4.株主資本等変動計算書の導入によるその他注記等への影響

会社法においては、株主資本等変動計算書の導入と「発行済株式」の注記が求められるようになったことにより、従来は附属明細書で記載が求められていた「資本金、資本剰余金並びに利益準備金及び任意積立金の増減」が不要となっています(会社計規145)。

また、金融商品取引法においては、同様に「資本金等明細表」が財規改正で削除され(財規121)、期末の発行済株式数にかかる貸借対照表注記(旧財規68条の2の5)も不要となっています(株主資本等変動計算書の注記としては必要)。さらに、株主資本等変動計算書において自己株式の注記が求められるようになったため、期末の自己株式数に係る貸借対照表注記の条文(旧財規68条の2の5、旧連結財規43条の2)は削除されています。