コラム


日本内部統制研究学会主催 第1回公開シンポジウム「内部統制と企業不正」(2008.02.08)

新日本監査法人 代表社員
公認会計士 成田智弘

2007年12月8日に創立された日本内部統制研究学会の公開シンポジウムが2008年1月21日に、東京九段会館大ホールにおいて開催されました。公開シンポジウムの告知を行ってから、わずか10日の間に1,000名を超える申し込みがあり、ほぼ満席の盛会でした。

公開シンポジウムは、橋本尚氏(青山学院大学大学院教授)の司会で進行され、概要は次のとおりです。

1.開会のあいさつ

主催の日本内部統制研究学会会長の川北博氏(静岡県立大学客員教授)により、日本監査研究学会等の他の学会や団体と協力し、横断的活動を積極的に展開したい旨のあいさつがされました。

2.基調講演

当初、渡辺喜美氏(衆議院議員・内閣府特命担当大臣(金融))による基調講演が予定されていましたが、国会の代表質問と重なったため、山本明彦氏(衆議院議員・内閣府副大臣(金融))による講演が行われました。

「金融・資本市場の活性化に向けた対応」と題して、安心して投資ができるために日本の金融当局がどのような対応を行っているか、について説明されました。

日本においては金融市場の活性化が必要であり、金融商品の多様化、金融サービス利用者の保護を第一に考えて対応していることが説明されました。また、日本の金融市場の国際競争力の強化が必要であり、(1)プロ市場の創設、内部統制制度の導入などによる市場に対する信頼と活力の強化、(2)時代にマッチした金融サービスの提供などの金融サービスの多様化、(3)よりよい規制環境の確保、(4)環境の整備、などの対応がされていることに加え、サブプライム問題などにも言及されました。

3.特別講演

川北博氏による「内部統制と社会的公正」をテーマに講演が行われました。その概要は次のとおりです。

(1) 内部統制報告制度に対する調査結果

内部統制制度についての調査結果が公表されているが、大企業を対象とした結果と新興企業を対象とした結果が異なっている。新興企業では間に合うのかという問題がある。

(2) 法規制

会社法および会社法施行規則による規制では、その対象範囲が広い上に取締役は委任できず、また、事業報告に継続して記載して監査役の監査を受けなければならず、取締役の責任は重いものとなっている。これに対して、金融商品取引法では、直接の対象を「財務報告に係るもの」としている。

(3) 問題点

金融商品取引法では、会計周りをその対象としているため、会社法との間で「すき間」や「ギャップ」がないのかどうか、相互のつながりをどのように考えるのか。

内部統制の監査について、米国においてはSOX404条で先行して導入されているが、実際は大多数の会社については適用が延期に次ぐ延期で適用されていない。日本ではこのような対応が考えられないのか。また、ダイレクト・レポーティング等の適用方法について、日本方式と米国方式との差はどのようになっていくのか。どちらかに収れんされていくのか。

国際的制度との整合性について、会計基準のように、IFAC、IASB等で求められるようにならないか。内部統制についての国際的コンバージェンスはどのようになっていくのか。

コストの問題がどのようになるのか。

監査法人の問題として、大法人と中小法人とに二極分化し、ギャップが拡大しているがこれは良いことなのかどうか。

(4) 内部統制と不正の考え方

内部統制については、従前は会計監査のために議論されてきた面が強かった。内部統制に依拠し、実証手続の性質、タイミング、範囲を決めるという観点から議論されていた。これに対して、COSO以降は、会社の経営者のための議論となってきたが、内部統制は、そもそも会計監査のためではなく、会社の経営者たる「社長」のためのものである。また、不正についても一番大事なのは「社長」である。いずれもトップの責任は重い。

どのような組織にとっても、内部統制がないということは組織の崩壊につながると考えられる。