サブプライムローン ― 先進金融技術のつまずき(2008.02.13)
藤原義章
証券化と公正価値評価の問題
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昨年、サブプライムローン関連の証券化商品に投資した欧米大手金融機関の巨額損失の発表を受け、関連CP、MTN市場の機能停止、短期金融市場の逼迫(ひっぱく)、世界同時株安、米ドル売りといった動揺が国際金融市場に走りましたが、今年になってからも、さらに関連損失は拡大し、実体経済へのマイナスの影響が不安視される中、いまだ終わりが見えない状況にあります。 米国の低所得者向け住宅ローンの破たんが、なぜこれほど世界の金融市場に波及することになったのか。そこには、金融工学を使って品質劣悪な債権までAAAの債券に変える証券化という錬金術がありました。また、そうして生み出された金(?)の本当の価値は、一体どれだけなのか。このような答えようのない問題にも制限時間が迫っている状況にあります。 毎日の報道で、さまざまな分析がされていますが、その基本となる証券化の仕組みと米国における公正価値測定の議論、そしてその両者を結びつける格付けの役割についての理解は、欠かせないと思われます。ここでは、これらについて、いまさらではありますが、簡単に整理していきます。 以下は個人の見解であり、法人としての正式見解を表すものではありません。 |
| Q-1 | 証券化の仕組みはどうなっているのか |
| A |
まず、証券化をする上で前提になるのが、財務会計上の財務構成要素アプローチという考え方です。それは、住宅ローンなどの金融資産または金融負債を一つのものとしてとらえるのではなく、それを構成する財務的要素(財務構成要素)に分解し、その分解された財務的要素ごとに支配が他に移転することにより、譲渡が成立したと認める考え方です(満期前に買い戻す契約が実質的に付いていると譲渡したと認められません)(注1)。 これによって証券化では貸出人(オリジネーター)は債務者から金利や元本の取立てをする権利(サービサー業務)はそのままにしておいて、金利や元本の受け取り(キャッシュ・フロー)とそれに伴う回収不能になるリスク(信用リスク)を、他人に譲渡することができます。この譲渡を受けた債権を原資産としてプールし、それを担保債権として証券を発行するのが証券化の基本的な仕組みです。 こうした考え方により、さらに信用リスク部分のみを切り出して、取引するものに、クレジット・デフォルト・スワップのようなクレジット・デリバティブがありますが、経済効果としては「保証」のようなものだと思っておけばよいでしょう。
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| Q-2 | どうして危険性の高い貸出債権からでも最上級格付け債券を生み出すことができるのか |
| A |
証券化においては、いろいろな債権を集めて、それを担保債権として証券化すると、高格付けのものから、低格付けのもの、無格付けのものまでいろいろな格付けの債券を発行することができます。そのからくりが、次の優先・劣後構造です。 つまり、発行する証券を、原資産から返済を受ける優先度によって、優先、中間(メザニン)、劣後(エクイティ)といった段階(トランシェ)に分けます。原資産が返済不能になった場合、その損失は、まず劣後部分が負担し、次にメザニンという順番で負担していきます。損失のほとんどは劣後部分が負担するようになっていて、優先部分は、ほとんどがきちんと返済されることになります(注2)。つまり、優先部分はそれより返済が劣後する部分によって、信用補完されることになります。これが、優先・劣後構造です。
証券化のもとになる担保債権プールは、初めに、優先、メザニンそれぞれのトランシュが目標とする格付けが取れるように、倒産確率等の統計的手法を使って、切り分けられます(劣後はその残った部分で、普通は格付けは与えられません)。 例えば、優先部分は最上位のAAAが取れるように格付け会社が持つ過去のAAA社債の倒産確率(デフォルト率)とほぼ同じになるように期待損失率を設定します(実際には、デフォルト率以外にも、抵当権実行率、担保処分後のネット回収率など、ほかのデータも加味して期待損失が計算され、格付け機関ごとのモデルに従って、格付けが決定されます)。 こうすると平均格付けがA-の担保債権プールからでもAAAの優先部分から無格付けの劣後部分までトランシェ分けすることができます。 |
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