企業会計基準第14号「退職給付に係る会計基準」の一部改正(その2)(2008.04.14)
新日本監査法人 公認会計士 原寛
企業会計基準委員会から、平成19年5月15日付で、「退職給付に係る会計基準」の改正が公表されました。下記で、その内容に関して整理します。なお、本稿における意見に関する部分は、執筆者の私見であり当法人の見解ではありません。
改正のポイントを整理すると、以下のとおりです。
| (1) | 改正個所 |
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企業会計基準審議会が平成10年6月16日に公表した「退職給付に係る会計基準」(「退職給付に係る会計基準注解」を含む)のうち、同注解(注12)「複数事業主制度の企業年金について」を改正することにあります。 |
| (2) | 改正前基準の問題点 |
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改正前の基準では、「総合設立の厚生年金基金を採用している場合のように、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときは、基金への要拠出額を退職給付費用として計上するとともに、掛金拠出割合等により計算した年金資産の額を注記するものとする」ことが認められていました。この例外処理は、原則的な処理と比して、当該年金基金制度に係る退職給付債務に基づく負債が計上されず、いわゆる簿外負債を生じさせているという批判があったため、今回の改正でその対応が図られました。 |
| (3) | 改正内容の概要 |
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改正後の基準においても例外基準を満たす場合は、当該年金基金制度に係る退職給付債務に基づく負債を貸借対照表上で計上することを求めているのではなく、基金への要拠出額を退職給付費用として計上する処理を引き続き認める一方、従来の年金資産額だけの注記内容を拡充し、当該年金基金制度全体の積み立て状況(年金資産の額、年金財政計算上の給付債務の額およびその差引額)と制度全体の掛け金などに占める自社の拠出割合を注記することで対応が図られています。 |
| (4) | 改正後基準の有用性 |
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以上の改正により、注記の内容から当該年金基金制度全体における積立不足額の状況などを把握できるようになったといえます。 |
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平成19年4月1日以後開始する事業年度から適用となりますが、3月31日以前に開始する事業年度についても適用することができます。 金融商品取引法における開示を前提とすると、半期報告書においては退職給付に係る注記が求められていないことから、3月決算会社は、平成20年3月期の有価証券報告が初めての対応となるので(早期適用会社を除く)、それに向けて事前準備が必要となることに留意が必要です。 なお、四半期開示制度に移行後は、半期報告書と同様に四半期財務諸表等で退職給付関連の注記は求められていないので、期末の有価証券報告書においてのみ、退職給付関連の注記が必要となります。 |
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改正された部分の会計基準文言を比較表で示すと、以下のとおりです。 |
| 改正前 | 改正後 |
| (注12) 複数事業主制度の企業年金について |
(注12) 複数事業主制度の企業年金について |
総合設立の厚生年金基金を採用している場合のように、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときには、当該年金基金への要拠出額を退職給付費用として処理する。 |
複数の事業主により設立された企業年金制度を採用している場合において、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときには、当該年金制度への要拠出額を退職給付費用として処理する。 |
この場合においては、掛金拠出割合等により計算した年金資産の額を注記するものとする。 |
この場合においては、重要性が乏しいときを除き、当該年金制度全体の直近の積立状況(年金資産の額、年金財政計算上の給付債務の額及びその差引額)及び制度全体の掛金等に占める自社の割合並びにこれらに関する補足説明を注記するものとする。 |
| (注) | 下線部分は、筆者が追加(次ページ5.(2)参照) |
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以下の開示例は、改正会計基準で参考(開示例)として示されたものです。これは本会計基準の内容について理解を深めるために参考として示されたものであり、記載内容は各企業の実情などに応じて異なることに留意する必要があります。 |
| ・要拠出額を退職給付費用として処理している複数事業主制度に関する事項 | |||||||
| (1) | 積立状況に関する事項(XX年X月XX日現在)
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| (2) | 制度全体に占める当社グループの掛金拠出割合(または加入人数割合あるいは給与総額割合)(自XX年X月XX日 至XX年X月XX日(またはXX年X月XX日現在))
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| (3) | 補足説明
上記(1)の差引額の主な要因は、年金財政計算上の過去勤務債務残高XXX百万円(および繰越不足金(または別途積立金)XXX百万円)である。本制度における過去勤務債務の償却方法は期間X年の元利均等償却であり、当社グループは、当期の連結財務諸表上、特別掛金XX百万円を費用処理している。また、年金財政計算上の繰越不足金XXX百万円については、財政再計算に基づき必要に応じて特別掛金率を引き上げるなどの方法により処理されることとなる。 なお、特別掛金の額はあらかじめ定められた掛金率を掛金拠出時の標準給与の額に乗じることで算定されるため、上記(2)の割合は当社グループの実際の負担割合とは一致しない。 |
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| (注1) | 上記(1)(2)については、時点が貸借対照表日と一致しないことがあるため、これを明示する必要がある(第12項)。 |
| (注2) | 上記(3)については、将来の負担額の見込みに関する補足説明(第11項)の例として、差引額として算定された額に係る今後の取り扱いや、指標としての掛金拠出割合などと将来の実際の負担割合との関係を記載している。また、財務諸表上の影響を示すため、損益計算書上の費用処理額も示している。 |
| (注3) | 掛金拠出割合などが参加企業ごとの未償却過去勤務債務等の比率と明らかに乖離(かいり)している場合(企業ごとに負担割合などが異なる部分がある場合)には、特別掛金に係る拠出割合を示すなど、適宜、適切な補足説明を加える必要がある。 |
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