去る8月27日、米国証券取引委員会(SEC)は公開会議を開催し、米国上場企業の国際財務報告基準(IFRS)受け入れへ向けたロードマップ(行程表)案を提示するなど、IFRS採用へ向けて大きな一歩を踏み出しました。
昨年7月のリリース案の公表を受けて、SECは、「IFRSに準拠して作成された外国企業財務諸表の米国会計基準(US‐GAAP)への差異調整なしの承認」と題するリリースを同年12月に公表し、IASBが公表するIFRSに準拠して外国企業が財務諸表を作成した場合には、米国会計基準との差異調整表の作成を2007年11月16日以降終了する事業年度から撤廃することを決定しました。また、SECは、同年8月、米国企業にもIFRSを採用する選択肢を認めるべきか否かに関して、「米国企業がIFRSに準拠して財務諸表を作成することの容認に関するコンセプト・リリース」を公表し、同年12月と本年8月に円卓会議を開催しています。今般の提案により、米国は、IFRSの採用へ向けて大きく舵を切ったといえます。その背景には、世界の100カ国以上がIFRSの採用を義務付けたり、許容しており、IFRSの市場シェアは35%に達し、今後ますます増大傾向にあるのに対して、米国会計基準の市場シェアは28%にすぎないことや米国の投資家の3分の2が外国企業の株式を保有しており、米国企業にIFRS採用を認めることが、投資家保護や財務諸表の比較可能性の確保につながるとの判断があります。
SECによれば、まず、特定の米国上場企業に対して09年12月15日以後終了する事業年度からIFRSの採用を認めるといいます。当該企業は限定されており、ある業種において、時価総額で世界上位20社に入っており、その20社の財務報告の多くがIFRSに基づいてなされているという要件を満たす必要があります。こうした企業が米国基準に代えてIFRSを採用すれば、米国の投資家は、財務諸表の比較可能性の向上という恩恵に浴することができるでしょう。対象企業は、少なくとも34業種110社あり、当該企業は、SECから「ノー・オブジェクション・レター」を受領すれば、IFRSに基づく財務諸表を作成する選択肢を採用することができます。この場合、SECに対しては、IFRSに基づく監査済み財務諸表を過去3年分提出する必要があります(IFRSが求めているのは、過去2年分の比較財務諸表)。すなわち、暦年を事業年度とする企業が10年に提出するフォーム10-Kについては、07年、08年、09年12月期の3期分の監査済み財務諸表を提出する必要があります。
また、SECは、将来、米国上場企業に対して、IFRSの採用を義務付けるに際しては、次の四つの里程標(マイルストーン)をクリアする必要があるとしています。
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①IFRSの質の向上―08年4月見直しのMOU9項目の完成
②国際会計基準委員会財団(IASCF)の資金調達態勢の強化や説明責任の明確化―モニタリンググループの設置
③XBRL(拡張可能な事業報告言語)などのインタラクティブデータ利用能力の向上
④米国におけるIFRS教育・研修の充実
上記の特定の企業のIFRS導入による効果や各里程標の達成状況を踏まえた上で、SECは、11年に、すべての米国上場企業に対して、IFRSの採用を義務付けるか否かの決定を行います。
ロードマップ案によれば、11年にIFRSの採用を義務付けるとの決定が行われた場合には、大規模早期適用企業については、14年12月15日以後終了する事業年度から、早期適用企業については、15年12月15日以後終了する事業年度から、その他の企業(早期適用企業以外)については、16年12月15日以後終了する事業年度から、IFRSに基づく財務諸表の作成がそれぞれ義務付けられます。
企業活動や資金調達のグローバル化に伴い、単一の、質の高い、国際的に認められ、理解され、適用される会計基準が必要とされることは、ビジネスの言語、ファイナンスの言語、さらには、ディスクロージャーの言語としての会計の宿命といえるでしょう。そして、IFRSがこうした世界共通言語、世界共通のモノサシとして受け入れられるためには、次の五つの要件を満たす必要があるでしょう。また、そのためには、世界の会計プロフェッションの支援態勢・協力態勢が不可欠です。
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①投資家の利益になり、投資家保護に資すること
②デュープロセスを通じて、会計基準設定プロセスの透明性を高めること
③会計基準設定主体の独立性を高めること
④利害関係者のニーズを満たし、適時に対応する説明責任を明確化すること
⑤すべての利害関係者に会計基準設定プロセスへの参加の機会を与えること
米国の会計基準が併存していることが、真の意味での会計基準の国際的統一化の障害となっているのであれば、投資家の利益のために、自国の基準を捨ててでも、IFRSへ移行して、世界共通言語を達成しようというスタンスで臨んでいる米国の姿勢には、学ぶところ大です。わが国も重要な岐路に立っているとの認識の下に、一刻も早く明確な方向性を国家戦略として打ち出すべきです。
ところで、IFRSとXBRLは、SECのコックス委員長の2枚看板といわれていますが、XBRLに関しても、去る8月19日にSECから、従来の電子開示システムEDGARから新しくIDEA(Interactive Data Electronic Applications)へ移行する方向性が打ち出されています。XBRLの面での国際的標準化・統一化は、IFRSの世界的な普及に多大な影響を及ぼすといわれています。会計は、コミュニケーションの手段であり、情報技術(IT)面における進展からも目が離せないところです。
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