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2007.10.04
オランダ減税法案裏話

話は1年前になります。2006年春、オランダ法人税率を25%以下にする、との『衝撃的なニュース』がオランダ日系企業を揺さぶりました。

デンハーグ ノールドアインデ宮殿(女王の執務宮)
デンハーグ ノールドアインデ宮殿(女王の執務宮)

オランダの税率が25%以下になると、日本の税制により、オランダ子会社の留保利益が日本の親会社で課税される可能性が出てきます。日本で課税されると、オランダの低い法人税率もその意味がなくなり、企業経営的にはフリーキャッシュが減少してしまいます。親会社から見ると、オランダ子会社の存在意義も問われるかもしれません。

オランダには、たくさんの持株会社、金融会社、卸売会社があり、このタックスヘイブン税制の適用を受ける可能性が高いと考えられています。そこで、その影響を憂慮したオランダ日本商工会議所は、オランダ財務省に働きかけます。オランダ財務省は、主な在オランダ日系企業と会計事務所(この記事をオランダの新聞社にリークした会計事務所は除かれたようです)の日系企業担当者を招集し、急きょ、ヒアリングの機会が持たれました。その場において、オランダ財務省は、日系企業の置かれている立場に理解を示し、この騒ぎに陳謝したと聞いています。

その後、法案の内容について、政府担当者と専門家とのやり取りが行われ、その結果、最終法案として決定されたのは、2007年1月1日から施行されている法人税25.5%です。これにより、オランダの法人税率は25%超となり、当面、日本のタックスヘイブン税制の心配は回避されることとなりました。

当時、その騒ぎとその後の対応に触れることができました。この一連の流れにおける、オランダ政府の対応には驚かされ、また、感心をしたものです。実は、その法案内容のやり取りの際にも、いろいろな話を漏れ聞きました。その中にも驚くような政府の提案があったりしたものです。また、これは小国としての商業感覚のなせる技のみではなく、日本との歴史深い関係を重視してくれたのかもしれません。いずれにせよ、このすばやい柔軟性が、この小国を商業国家として長生きさせる秘訣(ひけつ)の一つと感じ入りました。

デンハーグ ビネンホフ(国会議事堂)
デンハーグ ビネンホフ(国会議事堂)

しかし、オランダを取り巻く、EU諸国の法人税率低減の動きは止まらないようです。

オランダのほかの欧州の主要国の税制は、英国の法人税は30%から28%に、ドイツは実効税率を約40%から30%に低減予定。サルコジ大統領のフランスも、企業インセンティブのための法人税減税が期待されています。また、2007年度現在のEU加盟国の法人税平均はすでに24.2%まで低下しているとされています。欧州の各国は、法人税の減税を所得税や間接税の課税強化に転嫁しているようです。このような動向の中、今後、各国の法人税率競争により、この平均法人税率はますます下がることになるでしょう。

ところで、オランダでは、今年になってからさらなる法人税の低減のうわさが流れました。しかしながら、現法案では、そのような状況は避けられたようです。でも、EUを取り巻く動向とオランダの特異な環境から、将来においてさらなる引き下げがないとはいえません。

EU内の『税制の調和』の裏で広げられる税率競争。この大きな変化に巻き込まれるのは、個人と企業だけでなく、国家もまた、その影響を大いに受けます。まだまだ静かなる激動の時期であり、これからも目を離すことができないと思います。

2007.10.04この記事のURL
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著者
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池内清伸
(いけうち きよのぶ)

新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人 税理士

歴史、芸術と酒をこよなく愛し、欧州各都市に神出鬼没する吟遊詩人。

オランダから欧州各国の駐在員と連携して、生の情報を発信します。

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