参入障壁はビジネスチャンス?
企業経営者および当該企業の株式を保有する投資家にとっては、利益の極大化が最重要な経営命題の一つであり、税金を含めたコストの最小化を目指すために、製造・販売・研究開発・財務・管理のために最適なロケーションにおいてビジネスを展開することが最大課題となります。
その意味で、ビジネス展開にとって使い勝手の悪いロケーション、例えば、政情不安や人権問題、資本取引規制や外貨取引規制、インフラの未整備、企業関連法制や税制の制約、従業員の教育水準が低い地域は敬遠される傾向がありました。
また、企業運営のためのコストが高い地域、例えば人件費が高い、インフラコストが高い、税金コストや取引コストが高い地域は、投資回収効率が悪化することになるため、意思決定では不利な方向に作用します。
しかしながら、ビジネスを展開するために使い勝手の悪いシステムやインフラは、“参入障壁”となることも事実で、その先には競争原理が十分に働いていない、未開拓のマーケットが広がっていることもまた事実です。
以前から中国や新興国に進出している企業の中でも、先行者利得を獲得したり、ブランドが確立している企業は、この参入障壁がもたらしたタイムラグの恩恵をうまく享受できたケースがあります。まさに、“靴を履いていない=靴の潜在的なマーケット”のたとえ話の世界のとおりで、マーケットに入り込んでしまえば逆に、“参入障壁”が崩れない限りは参入者にとって有利に働くことになります。
最近注目を集めているボリュームゾーンやBOPの観点からは、これらの制約条件はビジネスの展開を必ずしも制約するものではなくなってきています。CSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)の名のもと、QOL(生活水準)の向上や環境問題に取り組む企業などを中心に、新興国や貧困地域に進出する姿勢を積極的に打ち出す企業が増えてきています。
別の表現をすれば、これらの制約があっても余りあるリターンが期待されるわけで、広大なマーケットが存在する、市場が拡大するロケーションでは、“花形”を目指して“金のなる木”から得られた経営資源を投入していくことになります。マーケットの“青田買い”ともいえ、先行者利得が得られれば大きな果実(リターン)を手にすることができます。
(ただし、それだけ“魅力的”な潜在市場であるわけですから、上位数社が市場を寡占するようなビジネスモデルでない限りは、タフな新規参入者やキャッチアッパー、企業買収者への継続的な対処が求められることになります。)
(次回に続く)


(あきもと ひろき)
新日本有限責任監査法人 公認会計士
2003年~2008年上海駐在。
のだめ系公認会計士。吹奏楽を愛する武闘派エンターテイナー。
帰国後は財務諸表監査や内部統制監査に従事。
中国案件を担当し、中国の最新の実務経験と知識を役立てている。
鉄道と長距離バスを使いこなし、かばん一つでどこにでも飛んでいく送迎無用の中国専門要員。
中国語は専門翻訳および通訳をこなす上級レベル。

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