会計基準の設定主体の内部の議論を伺いますと、とにかく、整合性の問題を処理するのが大変です。一貫した考え方で基準を作ることはもちろん、既存の基準との整合性が問題となります。
もともと整合的に作られている会計基準の体系ですから、一カ所をいじると、それが全体に波及します。それで、そのたびに整合性について議論をして、所要の改正を行い、場合によっては経過措置や特例措置を設けることになります。
インプリケーションが二つあります。一つは、会計基準を段階的に改正するのではなく、一気に改正してしまうというアプローチがあるのではないか、ということです。こうすれば、新しい基準を作るたびに細々した作業をしなければならない手間がだいぶ減少すると思われます。企業の側も、システムを直すときは大変ですが、毎期微調整をしていくことに比べれば負担感が少なくなるのではないかと思います。
こういうアプローチは、会計の外の世界では行われています。例えば、「会社法の現代化」は、まさに会社法の大改正を一気にやってしまいました。会計の世界でも、国際会計基準審議会(およびその前身の国際会計基準委員会)が取り組んだ、「比較可能性プロジェクト」、「コア・スタンダード・プロジェクト」などがあります。現在、国際会計基準審議会は、新しい会計基準の適用時期を凍結して、2009年度の一括適用に向けて新しい基準を、いわばため込んでいる状態です。
日本の会計人も、英知を集めて、歴史に残る仕事をしてほしいと思います。たぶん、実質的にそれに相当する仕事はしていますが、それをまとめて分かりやすく見せる工夫があってもいいのではないか、と思います。その方が、基準設定の側も、企業の側も、さらには利用者の側も、細々した作業が減ってかえって取り組みやすいような気がします。
もう一つのインプリケーションは、まったく違う話になりますが、最近の会計基準は、整合性のレベルが高まってきて、企業の状況が少し傾いてくると、一気にいろいろな領域に連動して極端に大きな損失を計上するような傾向にあります。例えば、あるメーカーが生産販売している製品に不具合が生じて、同社の製品の価格が下落したとします。そうすると、まず、現在保有している棚卸資産の評価損を計上することになるでしょう。価格下落が継続する場合、将来のキャッシュフローが減少するので、固定資産の減損処理をする必要となることもあるでしょう。過去に販売した製品の回収に伴うコストは、引当金処理をする必要があります。さらに追い打ちをかけるのは、税効果会計です。繰延税金資産の回収可能性が否定されて、税引後の損益が悪化します。このように、会計基準の整合性は、方向が決まるとその方向に一気に回転させるような効果があります。
そうすると、会計基準の中にも適当に余裕を持たせておかないといけないような気もします。








