管理会計のナカミ


2010.01.27
単純総合原価計算の基本―工程内仕掛品の評価

単純総合原価計算

総合原価計算という原価計算方法は、受注生産ではなく市場予測に基づいて生産計画をたて、生産計画に従って製品を量産していくタイプの生産方法に適用される原価計算方法です。話を単純化するため、生産されている製品は一つだけというパターンに対応する原価計算(単純総合原価計算)を考えていきます。製品が複数になるパターンは後日説明していくことにしましょう。

直接材料費と加工費の分類

さて、ある工場ではA製品1種類だけを量産しています。この製品がある月に1万個生産されているとする。1種類しか製品を生産していないため、工場で発生した原価は原則として全額その製品に集計されることになります。従って、集計された直接材料費と加工費(直接労務費と製造間接費)を1カ月の生産量に集計して、生産数量で割れば、製品1単位当たりの製造原価を計算することができるわけです。

ここで、原価を直接材料費と加工費に分類するには理由があります。直接材料費(素材費、原料費および買入部品費)は、多くの場合、一定の投入点で投入されます。組立型産業における部品などを考えていただければ理解しやすいでしょう。他方、加工費(直接労務費、直接経費と製造間接費)は、一定の投入点で投入されると考えるのは合理的ではありません。工程にわたって平均的に投入されていると考えることが必要ではないかと思います。ただし、直接労務費は現実的には組立型産業においては組立ポイントで投入されているので、より正確な原価計算を志向すればこのような考えは不十分かもしれません。両者を区別する基準は、基本的には定点発生しているか、平均発生しているかということ(これを原価態様とかコスト・ビヘイビアといいます)になります。従って、例えば工程において平均的に投入している材料(例えば塗装工程の塗料など)や、工程の一点で特殊な作業を要しているような場合には、計算方法について工夫をする必要があります。

加工進捗(しんちょく)度の計算

さて、先ほど、1カ月の直接材料費と加工費の合計を生産数量で割れば、製品1単位当たりの製造原価を計算できると書いたのですが、これには一つ解決しなければならない課題があります。それが工程の中に残されている仕掛品の存在です。仕掛品は未完成品ですから、そこまでに投入されている材料や加工に対する原価だけを負担すればいいことになります。この点に関して、定点で投入されている材料は、投入されているものとされていないものが明確ですから、直接材料費の月末仕掛品と完成品への配分は投入数量をベースとすれば容易にできることになります。他方、やっかいなのは加工費です。

例えば、完成品が100個あり、未完成の仕掛品が10個あったとします。話を簡単にするために、材料は工程の始点で投入されて、その後は加工作業のみが行われているとしましょう。材料は工程の始点で投入されているため、材料費については完成品と月末仕掛品の数量の比、すなわち100:10で配分すればよいことはお分かりいただけると思います。しかし、加工費はそうはいきません。仕掛品は加工が完了していないからです。そこで、加工進捗度という概念を利用して計算をします。今、10個の仕掛品は、加工が半分だけ終わった状態であるとしましょう。これを加工進捗度50%と考えていきます。10個の仕掛品について、50%の加工が終わっているわけですから、完成している加工量は5個分であることが分かります(10個×50%)。これを完成品換算量といいます。つまり、材料は10個分投入してはいるものの、加工は5個を完成させる分しか投入されていないと考えるのです。完成品の100個については、100個分の加工が投入されていますので、結果的に、加工費は完成品100個と月末仕掛品の加工費完成品換算量5個で配分することになります。この点が総合原価計算の面倒な点です。

実務上の加工進捗度の測定

ただ、こうした総合原価計算においては、実際の状況はテキストに示されている計算事例とはかなり異なることが起きています。

第1に、生産のサイクルタイムの短縮化によって、必ずしも工程の中に仕掛品が残っていないということが挙げられます。多くの組立型産業、製薬業あるいは食品加工業などでは、製品一単位の組立時間は数秒から十数分で済んでしまい、工程内の作業をすべて完了して1日の作業を終了しています。このような生産をしている企業では、月末仕掛品自体がありませんから、上記のような加工費の完成品と(工程内)月末仕掛品への配分はまったく必要がありません。また、このような状態では、減損や仕損が生じていた場合でも、すべて減損費や仕損費は完成品が負担すればよいので、減損費や仕損費の処理方法も極めて簡単です。

第2に、月末仕掛品が存在する場合、ラインが長い自動車産業のような組立型産業を前提にすれば、先に示したように50%加工したものが10個だけ残っているというようなことはほとんどありません。工程の中には作業中心点がいくつかあり、あちこちに少しずつ仕掛品が残っているのが一般的ではないでしょうか。このような場合には、正確にその加工進捗度を見積もるケースもありますが、多くはあちこちに均等に仕掛品があるのだから、全体を通じて50%というような形で推定する、あるいは、工程を四つに分割し、最初の4分の1にあるものは25%、次が50%といった形で推定をしています。前者では、月初仕掛品も月末仕掛品も加工進捗度は50%、後者では、月初仕掛品にも月末仕掛品にも加工進捗度25%、50%、75%のものが存在するという形になってきます。

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著者
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清水 孝
(しみず たかし)

早稲田大学大学院会計研究科教授。
博士(商学)早稲田大学。

早稲田大学商学部、大学院商学研究科・会計研究科で教壇に立っている。専門は管理会計・原価計算。最近は戦略を成功させるための戦略マネジメント・システムの調査・研究を進めている。

主要業績:

ほか、分担執筆、論文など多数

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