新年おめでとうございます。今年も管理会計や原価計算にまつわるさまざまな情報を発信していきたいと思います。よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。
活動基準原価計算から活動基準原価管理へ
前回まで述べてきた活動基準原価計算は、米国では正確な原価計算を行うことで、主として価格戦略や製品戦略に使用されるものとして発展してきました。つまり、手間ひまを必要とする製品の原価は、本当はどのくらいかかっているのかを知り、価格に反映させたり、製品ラインナップの再考に使用するものとして使われたのです。しかし、よく考えてみますと、原価が思ったより高いから価格を上げてくれ、と取引先に簡単に言うわけにはいきませんし、同じように原価が高くて利益が出ないから、来月からもう作りません、ということも難しいのではないでしょうか。状況によっては、こうしたことも考えなければならないことは事実ですが、その前にやるべきこともたくさんあります。それは、原価が高いのであれば、それをどうやって低減していくのか、ということです。活動基準原価計算によって明らかになった原価を、活動と結び付けて低減していくための手法が活動基準原価管理(Activity-Based Management; ABM)です。
活動基準原価管理
活動基準原価計算によって、製造間接費は活動を経由して製品に対して配賦されるようになっています。そのロジックは、製品の生産のために活動が消費され、活動が資源である材料、労働、その他サービスを消費しているというものでした。ここでは、製品の生産のための活動と、活動を実施するために必要な資源という2段階の考え方から成り立っていますから、原価を削減するための活動基準原価管理は、次のような二つの手法を考えていくことになるわけです。第1に、活動が製品の生産のために必要であることを前提として、その活動をできるだけ効率的に実施しようとするものです。他方、第2の考え方は、そもそも活動が製品の生産に不可欠であるかどうか、あるいは活動の連結が有効であるのかどうかという観点を考えるものとなっています。
活動基準原価管理で注目すべきなのは、顧客の価値を極めて重視した点にあります。顧客の価値とは、顧客が購入した製品やサービスによって価値があると認識されたものすべてを言うと考えられますが、この点に着目すると、活動は2種類に分類することができます。一つは、価値付加的活動(顧客価値を生み出す活動)、もう一つは価値非付加的活動(顧客価値を生み出さない活動)です。極めて単純に考えれば、価値付加的活動は顧客価値を生み出す重要な活動ですから、効率化を進めていき、価値非付加的活動は顧客価値を生まないものですから排除してしまうことで、原価を低減することが可能になっていきます。このとき、活動やコスト・ドライバーを使用して原価低減の道筋を考えていこうとするのが、活動基準原価管理の特色なのです。
活動基準原価管理の内容
活動基準原価管理には、一般に活動の分析、コスト・ドライバーの分析、業績の分析という三つの要素があると考えられています(Raffsh, N. and P.B.B. Turney, eds., "Glossary of Activity-Based Management," Journal of Cost Management, 5(3), 1991.)。活動分析は、実施されている活動を、先のように価値付加的活動と価値非付加的活動に分類することです。多くの場合、実施されている活動には意味があると考えられていますが、それは顧客と結び付けられているかどうかをきちんと考えなおすことが必要です。「仕事のための仕事」(何年間にもわたって誰も見ていないのに手間をかけて集計しているデータが身の回りにありませんか?)や、手待ち時間のような、排除されるべき活動を一度洗い出す必要があるということです。これを活動分析といいます。さて、活動が付加価値活動と非付加価値活動に分類されると、次に、それぞれの活動が行われる原因(業務のドライバー)を分析しなければなりません。上記のように顧客価値を生まない活動がなぜ行われているのか、その原因を探してみるということです。先に示したように、誰も見ていないデータをただ「今までやってきたから今止めるわけにはいかない」というような理由で集計しているのであれば、当然それは見直しの対象になりますね。KPI(重要業績指標)はKey(重要)であるものだけに限定されるべきなのです。また、何らかの重大な理由があって手待ち時間があるような場合は、その原因を追及して、例えばプロセス全体を改善するような大きなプロジェクトを立ち上げることが必要になることもあるでしょう。最後に、業績分析が行われます。それぞれの活動のパフォーマンス(単位当たりアウトプット)を測定し、ベンチマークしたり過去の趨勢(すうせい)と比較したりしながら、業績を分析することになるのです。


(しみず たかし)
早稲田大学大学院会計研究科教授。
博士(商学)早稲田大学。
早稲田大学商学部、大学院商学研究科・会計研究科で教壇に立っている。専門は管理会計・原価計算。最近は戦略を成功させるための戦略マネジメント・システムの調査・研究を進めている。
主要業績:
- 「戦略管理会計」
(中央経済社刊、2001年) - 「入門原価計算(第2版)」
(共著書、中央経済社刊、2004年) - 「戦略マネジメント・システム」
(編著書、東洋経済新報社刊、
2004年) - 「業績評価の理論と実務」
(訳書、東洋経済新報社、2004年) - 「脱予算経営」
(監訳書、生産性出版刊、2005年) - 「上級原価計算(第2版)」
(中央経済社刊、2006年) - 「演習 管理会計論」
(共著書、中央経済社刊、2008年) - 「BSC戦略マネジメント・ハンドブック」
(監訳書、中央経済社刊、2009年) - 「スタンダード管理会計」
(共著書、東洋経済新報社刊、
2009年)

- バランスト・スコアカードの下方展開(2010.06.29)
- バランスト・スコアカード再び-BSCべからず集(2010.06.23)
- 総合原価計算における仕損費の処理(3)(2010.05.11)

- 2010年05 月
- 2010年04 月
- 2010年03 月
- 2010年02 月
- 2010年01 月
- 2009年12 月
- 2009年11 月
- 2009年10 月
- 2009年09 月
- 2009年08 月
- 2009年07 月
- 2009年06 月
- 2009年05 月
- 2009年04 月
- 2009年03 月
- 2009年02 月
- 2009年01 月
- 2008年12 月
- 2008年11 月
- 2008年10 月
- 2008年09 月
- 2008年08 月
- 2008年07 月
- 2008年06 月
- 2008年05 月
- 2008年04 月
- 2008年03 月
- 2007年11 月
- 2007年10 月
- 2007年02 月
- 2007年01 月
- 2006年11 月
- 2006年10 月
- 2006年08 月
- 2006年07 月
- 2006年05 月




